夢のマイホームで衝撃の事実が発覚「建築確認申請が出されていなかった!」…はたして家族は住み続けられるのか【不動産鑑定士の体験談】
関西で会社員として働くAさんは、郊外に念願の新居を購入しました。終の棲家を手に入れたとして満足感を味わい、妻も2人の子供も新しい家の完成を喜んでいたのです。
引っ越しを終え、新居での生活に慣れたある日、Aさんのもとに市役所から一通の封書が届いていました。中身を確認すると、Aさんの家は建築確認申請がおこなわれておらず、詳細を確認したいので、役所まで来て欲しいというものでした。
慌ててAさんは売主に連絡を取ります。売主が建築会社、設計事務所に確認をしたところ、確かに建築確認申請がおこなわれていなかったのです。なぜ建築確認申請がおこなわれていなかったのでしょうか。またAさんはこの家に住み続けられるのでしょうか。株式会社たてやま総合鑑定の立山壮平さんに話を聞きました。
ーなぜ建築確認申請が出されていなかったのでしょうか
実は建築確認申請が出されていなかった理由はわかっていません。本来であれば設計事務所が申請を出すのですが、Aさんの家が建てはじめるころに担当の設計士が辞めていたため、確認できなかったのです。
建築会社も売主も、申請は設計事務所がやっているものだと思い込んでおり、確認がされないまま建築が進められてしまいました。
ーAさんはこの家に住み続けられるのでしょうか
結果的にはAさんはこの家に住み続けられるようになりました。Aさんが依頼した弁護士が、売主、建築会社、設計事務所を相手取って交渉を行った結果、設計事務所が責任を持って対応するということになったのです。
通常の手順では建築確認申請が提出され、完成後に役所が申請内容と相違が無いかをチェックします。問題がなければ検査済証が作成されます。ただAさんのケースでは建築確認申請が作られていないので、役所もチェックすることができません。もちろん検査済証も作成できないという回答でした。
設計事務所が役所と交渉した結果、役所が提示した条件を満たせば、検査済証は出せないものの家の使用を認める書類は作成できるとの返答が得られたのです。
ーAさんはその後、どうされたのですか
通常の手順ではないため、仮にAさんがその家を手放して売却する際には、マイナス査定がついてしまいます。ただAさんと家族はその家を気に入っているため、それでも問題ないと判断しました。
そのうえで設計事務所は、再度構造計算をやり直し、計算結果をもとに家の修繕工事が実施されます。その結果、役所から使用許可が出て、Aさんはその家に住み続けることなりました。
◆立山壮平(たてやま・そうへい)不動産鑑定士・一級建築士 大阪府茨木市を拠点に「土地・建物の身近な相談窓口」として活動。週1回のジョギングや登山などの写真をSNSで発信するなど、アクティブな面もチラ見せ中。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)