「こんなうまいポンズはない!」 たかじん絶賛で全国区になった「旭ポンズ」 伝統の味守った創業者家族の商道徳
ちょっとお高いけれど、関西では食卓の定番になっているポン酢「旭ポンズ」。関西以外にも全国にファンを持ち、年間200万本も売れる「幻のポン酢」と呼ばれているのをご存じでしょうか。「旭ポンズ」は1967年に発売。発売から50年以上も経過した現在も毎年200万本、売上約14億円。変わらぬ味でロングセラー!そこには創業者一族の親子愛と兄弟の絆がありました。大阪が生んだ名品の知られざる誕生秘話に迫ります。
■大阪の名店に通い詰めて最高のポン酢が誕生!
「旭ポンズ」を作っているのは大阪・八尾市に本社を置く旭食品。戦後間もない1948年、初代社長である悦司の父・高田耕治と妻のハマエが製麺会社として「旭食品」を創業。そうめんに続き、そうめんなどに使う「冷やしだし」を製造・販売します。しかし、そうめんや冷やしだしが売れるのは夏のみ。なんとか冬場も売れる商品を、と考えていたところ、耕治は大阪・新世界のふぐ料理専門店「づぼらや」で“ポン酢”と出会います。「ふぐはもちろん、カニに、かしわにも、豆腐にも合いそう。これをうちで作れば、冬の家庭料理をもっとうまくできる!」。
ポン酢は当時ほとんど販売されていなかったそうで、誰もがポン酢を知らない時代。耕治は店の大将にポン酢の作り方を教えてほしいと直談判!店の味を他人に教えるのは当然ご法度。もちろん店の大将に断られますが、耕治は諦めずひたすら店に通い詰めて自らの舌でその味を研究。当時はポン酢のレシピが簡単に手に入らない時代で難航しましたが、1年以上歳月をかけ、試行錯誤を重ねてついに1967年「旭ポンズ」が完成しました。
■高級料亭並みのこだわりが一本に凝縮
「食材は正直。天然のええもん ぎょうさん使ったら美味しいもんができる」という思いで「旭ポンズ」を作った耕治。徹底的な食材へのこだわりは現在もその味や信念が変わらず受け継がれています。昆布は北海道産の利尻昆布、使うのは一番出汁のみ。しいたけは宮崎産のどんこ、混合節は宗田鰹が入った削り節と高級食材とされる天然素材を使用し、それらから取った出汁に徳島県産のスダチ、ユズ、ユコウの果汁をブレンド。「旭ポンズ」の1本には高級料亭顔負けのこだわりが凝縮されているのです。このこだわりは現在も引き継がれ、先代の言い伝えを守って今も作られています。定価864円と値段が高いのも納得です。
■知る人ぞ知る名品が全国区へ!「旭ポンズ」が広まった理由
耕治が自信を持って生み出した「旭ポンズ」ですが、発売当初は認知度が低く、味もわからないため、なかなか売れませんでした。そんな状況を打破したのは商売人の娘であるハマエの「損して得とれ」作戦でした。試供品を無料で配布したところ、口コミでその味が評判となり、「知る人ぞ知る通のポン酢」となったのです。
そんなある日のこと、急に「旭ポンズ」の注文が殺到。なんと、大御所芸能人・やしきたかじんがラジオで「鍋を食べるなら八尾の旭ポンズ こんなうまいポンズはない。」と絶賛したのだとか!やしきたかじんの影響力は絶大で「買って帰ったお客さんが食べて、美味しいなと思って買いに行ったら売り切れて置いてない。たかじんさんが幻のポン酢と言ってくれた」と現在の社長である2代目社長高田悦司は当時をにこやかに振り返りました。
■売り切れ続出を支えたのは…
売上が大幅アップという嬉しい状況の反面、作っても作っても追いつかないという過酷な状況に。悦司はどのようにしてそれを乗り越えたのでしょうか。実は悦司には双子の弟・益央がいました。「自分ひとりだったらそこまで努力しなかった。弟が頑張ってるから俺も負けないように頑張らなあかん」と弟のおかげで過酷な状況を乗り越えることができたのだそう。ポン酢の仕込みは兄、ビン詰めは弟、その後二人で配達と二人三脚で「旭ポンズ」を関西に広めていったのです。こうして関西人のお馴染みの「旭ポン酢」となりました。
しかし、売れている時も大事になってくるのは父・耕治の「目の届く生産をする」という教え。「昆布や柑橘は天然ものなので、たくさん売れるからといって大量生産をして品質が変わってしまっては意味がありません」耕治の教えを悦司社長が振り返ります。親子、そして双子の絆によって「旭ポンズ」の味は守られてきたのです。
■「申し訳ございません」社長自ら謝るも絶対に変えないこととは?
「旭ポンズ」には、ビンの口を王冠ではなくプルタブにしてほしいという要望がたびたび入るそうですが、「面倒くさい!」と言われても社長自ら絶対に変えないと宣言。開けた瞬間に広がる出汁や柑橘の香りを少しも逃すことなく家庭に届けたいという思いから昔ながらの王冠スタイルを守っているのです。
悦司社長が大事にしていることは「自分で出来ることを思い切りやりなさい」ということ。父からの教えを守り、それを引き継いだ息子二人が主導となって新工場も設立した際も、「普通はしないと思うが、旧工場の設備をそのまま新工場に移設した」のだとか。それもすべては守り続けてきた味を変えないため。
湯豆腐、かにちり、てっちり、お鍋や焼き肉、しゃぶしゃぶなど、さまざまな料理に重宝する幻のポン酢「旭ポン酢」。ぜひご自宅で試してみてはいかがでしょう。
【番組情報】
〇番組名
日経スペシャル もしものマネー道もしマネ
〇内容
『もしもの時』に備えるマネー道!マネー活用バラエティ!
〇放送日時
テレビ大阪 第1~3日曜日 午後2時放送!放送終了後はYouTubeチャンネル、TVerで無料見逃し配信中。
(まいどなニュース/クラブTVO編集部)