北陸新幹線の京都ルート 候補の桂川駅ってどんな街? 駅前に巨大イオンモール 阪急駅へも徒歩圏内
鉄道・運輸機構は今年8月、北陸新幹線小浜・京都ルートにおけるコース、京都市内側の駅の計画を発表しました。京都市内でのコース、駅では3ルートが提示され、その中で異色だったのが「桂川案」です。
「桂川案」はJR京都線(東海道本線)の桂川駅付近に新駅を設置するものです。しかし、桂川駅自体が知名度の高い駅ではないため、いまいちピンと来ないという方も少なくないように思います。そこで、実際に桂川駅を訪れ、周辺環境や利便性を確認しました。
■最も安価な桂川案
今年3月に北陸新幹線は福井県の敦賀駅延伸を果たしました。しかし、敦賀駅から先のコースがまだ決まっていません。
鉄道・運輸機構では8月、公式サイトで「北陸新幹線(敦賀・新大阪間)詳細駅位置・ルート図(案)ご説明資料」を公開しました。この資料にて、京都市内のコース・駅に関して、3案(南北案・東西案・桂川案)が提示されました。
3案ともに駅は地下駅となっています。このうち、南北案は京都駅南西部の地下、東西案は京都駅の地下にそれぞれ新駅を設けます。
桂川案は桂川駅周辺の地下に新駅を設け、既存の京都駅は通りません。桂川駅はJR京都線にあり、京都駅から南西方向に位置します。京都駅から桂川駅までの営業キロは5.3km、所要時間は5分です。計画では北陸新幹線新駅から京都駅まで乗り換え時間も含め19分を想定しています。
駅の工期は南北案が20年程度、東西案が28年程度、桂川案が26年程度。概算事業費(2023年4月)は南北案3.9兆円程度、東西案が3.7兆円程度、桂川案が3.4兆円程度となり、桂川案が最も安価となっています。
■京都府最大級のショッピングセンターがある桂川
桂川駅は2008年10月に誕生した若い駅です。停車する列車は普通(高槻駅から快速になる列車も含める)となり、新快速は通過します。先述したように京都駅までは5分、高槻駅までは15分です。
昼間時間帯の停車本数は1時間あたり4本。1日平均乗車人員(2022年度)は14,300人となり、隣駅の西大路駅(14,700人)とそれほど変わりません。
桂川駅周辺は発展著しく、その象徴がイオンモール京都桂川です。このイオンモールは2014年に開業し、桂川駅とはペデストリアンデッキで結ばれています。敷地面積は9.2万㎡にもなり、京都府下では最大級の商業施設です。
また、駅前にはマンションの姿も目立ちます。京都市は2021年に都市計画マスタープランを見直し、桂川駅周辺を「職住近接のまち」と位置付けました。そのため、建築物の高さ制限、容積率の緩和を進め、様々な建築物が建てられる施策を進めています。
■JR桂川駅から阪急洛西口駅への乗り換えは便利か?
桂川駅のもう一つの特徴は700m先に阪急京都線洛西口駅があることです。洛西口駅も若く、2003年3月に開業しました。特急系の種別は止まらず、準急と普通が停車します。
阪急京都線は四条通の地下を走り、市内中心部の四条烏丸、四条河原町に至ります。そして、桂駅から嵐山線が分岐します。つまり、桂川は京都駅だけでなく、京都市中心部、嵐山へもアクセスしやすいところなのです。
つまり、桂川案ですと、京都駅だけでなく、京都市中心部や嵐山へもアクセスしやすい、という仮説が立てられます。
それでは、桂川駅から洛西口駅へのアクセスはどうかというと、「大型荷物を持っていると大変」といった感じです。徒歩10分程度の道のりですが、現状ではイオンモール前の交差点において、歩道橋を渡る必要があります。交差点に歩行者信号はありません。そもそも、地上の歩道を大型荷物を持って10分も歩く、という選択肢はなかなか難しいように思います。
現に私が訪れたときは桂川駅~洛西口駅間を徒歩移動する人は見かけませんでした。参考までに、JR・阪急双方の乗り換えが日常的に見られる神戸市のJR摂津本山駅~阪急岡本駅間は約300mです。
現実的な解決策としては、新駅と洛西口駅を結ぶピストンバスの運行、もしくは「動く歩道」ムービングウォークの地下道を整備する、といった感じでしょうか。ただ、洛西口駅への乗り換えで手間を要するなら、京都駅での乗り換えの方がスムーズ、と考える利用者がいてもおかしくはないでしょう。
北陸新幹線の新駅を設置するか否かにかかわらず、桂川駅周辺は交通の便がよく、京都市内のフロンティアであることに変わりはありません。
(まいどなニュース特約・新田 浩之)