多くの救助犬が能登半島の豪雨被災地に出動 災害大国が考えるべき問題と救助ロボットに優る「救助犬の能力」とは?

令和6年9月21日に能登半島に発生した豪雨による行方不明者の捜索救助のため、現地に出動した、愛知県豊橋市を拠点に活動する民間の捜索救助犬活動団体「捜索救助犬 HDS K9」(@HDSK9_V)さん。他の救助犬団体と共に、現地で救助活動を行う消防隊の指揮のもと、4日間に渡る懸命な捜索救助活動を行なった。

今回、捜索救助犬 HDS K9から出動したのは、10歳になるベルジアン・シェパード・ドッグ・マリノアのオス、リッターくん。

ドイツ語で「騎士」を意味する名前を持つリッターくんは、令和6年元旦に発生した能登半島地震や、8月末に発生した愛知県蒲郡市の土砂崩れ現場でも行方不明者の発見に貢献した、優秀な救助犬だ。

■救助犬の恐るべき能力とは?

23日の夕方、現地に到着後、リッターくんはハンドラー(※救助犬を引率する人)さんと共に捜索を開始。

24日の朝からは、他の1団体に所属するハンドラー3名と救助犬3頭と共に合同捜索活動を開始。その際の様子をX(旧Twitter)やInstagramに投稿していた捜索救助犬 HDS K9さん。

捜索救助犬 HDS K9さんの投稿によると、特定の人物の「原臭」を追求する警察犬と違い、救助犬は空気中に漂う不特定な「生存者」の呼気、剥がれ落ちたタンパク質、ストレスの匂いなどをキャッチして追跡。救助対象を発見した際には、声や仕草でハンドラーに知らせる訓練を受けている。

そのため、泥や瓦礫などさまざまな臭いが充満し、周囲に消防隊や自衛隊員など多くの人間がいる救助現場でも、「要救助者」の発する匂いのみに反応するという。

■犬の安全を誰よりも考えているのは「ハンドラー」

現地の過酷な様子が伝わる投稿に対して、「犬に怪我をさせないで」という声が多く寄せられた。だが言うまでもなく、犬たちの安全を誰よりも考えているのは、犬たちと行動を共にしているハンドラーたちだ。

「ハンドラーはその日の気候・現地のコンディション・犬の体調などを考慮してその都度決断をしています」と、Xに投稿していた捜索救助犬 HDS K9さん。犬たちはハンドラーの大切な愛犬であり、共に訓練を重ね、厳しい試験を突破したかけがえのない相棒。ハンドラーたちはつねに彼らの安全を第一に考えながら行動している。

今回の能登半島の豪雨災害の現場でも、犬にとって危険だと判断した場所では、ハンドラーさんが大型犬のリッターくんを抱きかかえて移動していた。

■救助犬が「靴」を履いていない切実な理由

また、救助犬の活動が報じられるたび、「救助犬に靴を履かせて」といった声も多くあがる。捜索救助犬 HDS K9さんに伺ったところ、危険物が散乱している被災地で受傷する犬も少なくないという。

しかし、日本の被災現場には水分を多く含んだ泥や瓦礫が堆積しているため、「足先を靴でくるんで足の指を使えなくしてしまうと、このような場所を竹馬で歩くのと同じになり大変危険」なのだという。

この件に関しては、現状の「靴」(海外製)では対応できないという、高温多湿な日本の気候があり、救助犬の足にシンデレラフィットする「犬の活動靴」の開発が望まれる。

■今は「救助犬の能力」に頼るしかない

能登での捜索救助活動をSNSで報告していた捜索救助犬 HDS K9さんに対して、「危険な場所に犬を連れて行かないで」「早くロボットなりドローンに変われば良いのに」といった意見を投げかける人もいた。

一般的に犬が集中できる時間は5分程度と言われている。犬自身が興味を持って「楽しい」と思える行動でなければ、さらに集中は難しくなる。犬の性質を知らない方からすれば、救助犬の活動は”奉仕”に見えるかもしれない。だが実際は、「救助活動」やその「訓練」は犬たちにとって、大好きなハンドラーと一緒に行う楽しいゲームのような感覚なのだという。

消防のハイパーレスキューなどが所有する「救助ロボット」や「ドローン」については、「いつか、人命捜索技術が進歩して犬の能力を超える日が来るかもしれません。ですが、それまでは彼ら(救助犬の能力)に頼るしかありません」とXに投稿していた、捜索救助犬 HDS K9さん。

「訓練されていない犬でも、数日前に訓練場に落としたおやつの欠片の残り香を嗅ぎ当てるくらい、犬の能力は想像以上です。災害現場において、広範囲を素早く探すことができる救助犬を活用することは、より迅速な人命発見のためには有効です」

「本当にもう一刻も早く(救助犬の)代わりに被災者を救出して災害と戦ってくれるロボットを開発して欲しいと切に願っています」

(捜索救助犬 HDS K9さんのXの投稿より)

■災害大国なのに?救助犬団体の大半は無報酬の民間ボランティア

実は何よりも我々が考えるべき問題は、災害大国・日本で活動する救助犬団体のほとんどが、寄付金や自費で活動する「民間のボランティア」という事実だ。

ハンドラーは我々と同じ仕事を持つ一般人であり、有給などを利用しながら、大切な愛犬と共に被災地に向かう。あくまでもボランティアであり、報酬は発生しない。

さらに、国や自治体などの公的機関からの救助要請であっても、出動の際の燃料費などの諸経費はおろか、救助犬やハンドラーが身体的・心的外傷を受けた場合でも、公的な補助や補償は一切ない。

「今回の現場や宿営地では、以前一緒に訓練をしたことがあり、『救助犬』に理解を示してくださっている消防隊員さんが何名かいらして、とても心強かったです。訓練を通して、顔の見える関係作りが大切であると改めて感じました。

現地では今もまだ捜索が続いています(※10月4日時点)。引き続き活動に携わる方々のご無事をお祈りいたします。そして、いまだ行方のわからない方が、帰りを待つ方の元に1日でも早く戻ることが出来ますよう切に願っています」(捜索救助犬 HDS K9さん)

今後の活動を支えるため、現在、捜索救助犬 HDS K9では、クラウドファンディング「令和6年石川能登地震 捜索救助犬派遣」のネクスト・ゴールにチャレンジ中だ。

※令和6年9月21日に能登半島に発生した線状降水帯による大雨洪水によりお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみを申し上げます。一日も早い復旧復興と、被災された皆さまに平穏な日々が戻りますことをお祈り申し上げます。

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ リュウ)

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