「公園で暮らすこの子たちを迎えたい」 出会いから1年9カ月かけて、2匹の黒猫を“家猫”に
kurohime130724さん宅で暮らすクロキチくん(通称:クロちゃん)とヒメキチちゃん(通称:姫ちゃん)は共に公園で生きていた猫。飼い主さんはクロちゃんに甘えられ、お迎えを検討するようになりました。
■「一緒に暮らしたい」と思わせた2匹の黒猫
2022年、自宅近くの公園を散歩していた投稿者さんは、黒猫のクロちゃんと遭遇。クロちゃんは足元へすり寄り、甘えてきました。
野良猫なのに、人懐っこい。驚いた投稿者さんは「またあの子に会えるかな」と思いながら、公園へ通うように。すると、クロちゃんはにおいを嗅ぎつけ、駆け寄ってきてくれるようになりました。
嬉しくなった投稿者さんは毎日、仕事終わりに公園へ行き、クロちゃんとスキンシップ。その中で同じく黒猫の姫ちゃんも懐いてくれ、クロちゃんとの仲睦まじい姿を見せてくれました。
「ご飯を食べている最中に雨が降り、雷も鳴りだした瞬間、2匹はお尻をフリフリさせながら小走りで屋根がある駐輪場に雨宿りしに行きました。その後ろ姿が本当にかわいくて…」
この子たちと暮らしたい。そんな気持ちが募るも当時、住んでいた家はペット不可。そこで、公園の近くで猫と暮らせる物件を探すことに。しかし、猫の飼育ができる物件は少なく、保護の決行に至れたのは出会いから約1年9カ月経った頃でした。
保護は、猫の捕獲や飼い猫の捜索を専門に請け負うお手伝い屋さんに依頼。市の許可を得ているボランティア「公園猫サポーター」の協力を得ながら捕獲をしました。
■ボランティアの力も借りて2匹を同時に捕獲
捕獲時、姫ちゃんは警戒心が強く、クロちゃんが近くにいないと捕獲器には入ってくれず。そこでボランティアの方たちと話し合い、2匹を同時に捕獲することに。
「作戦は大成功。5分もかからず、無事に捕獲できました。でも2匹は捕獲器の中で暴れ、金網に向かって何度も頭突き。名前を呼んで落ち着かせようとしましたが頭突きをし続け、額を怪我してしまいました。その姿を見て、涙が溢れました」
自宅に迎え入れてからも、2匹は不安げ。目をウルウルさせ、ケージ内に入れた小さな段ボール箱で隠れていました。
「奥は姫ちゃんで、手前がクロちゃん。姫ちゃんをかくまっているようにも見えました」
捕獲時に怖い思いさせてしまったから、信頼関係が崩れてしまったのでは…。そう心配になりましたが、お迎え2日目には2匹とも手からご飯を食べてくれ、一安心。
これまでのように、走り回ったり木に登ったりできなくなることでストレスを感じないよう、飼い主さんはキャットウォークやキャットホイールなどを用意し、楽しめる環境を整えました。
お迎えから2カ月半ほど経った今、2匹は部屋の窓からお外を眺めたり、家の探索に励んだりと自分らしい過ごし方を模索中。
「もしかしたら、何とかして外に出る方法を模索しているのかもしれません。お外の匂いが恋しいのか、窓が少し空いた隙間にお鼻をくっつけ、クンクンすることもあります」
■各々の個性を持つ相思相愛な2匹
被毛の色は同じでも、クロちゃんと姫ちゃんには各々の個性が。地域猫の証である「桜カット」を右耳に持つクロちゃんは、優しくて人懐っこい性格。
「公園猫時代には、『野良猫なのにデカいね』と感心されていました。でも、実は怖がりで寂しがり屋。私の姿が見えなくなったり、外出する空気を察知したりすると『ウォーン』と寂しそうに鳴きます」
一方、姫ちゃんは左耳に桜耳カットがあり、お姫様気質。撫でることができたのは、家猫になってからでした。
「意外と甘えん坊なのかも。クロちゃんが好きすぎるので、いないと『不安で寂しい』と鳴きます。不安の少ない状態で家猫にしてあげたかったので、一緒に捕獲できてよかった」
姫ちゃんは、クロちゃんの懐に包まれながら眠ることも。お互いをグルーミングし合うなどの相思相愛な姿を見るたび、投稿者さんは温かい気持ちになります。
「姫ちゃんはまだ警戒心が強いけれど、徐々に慣れてくれています。クロちゃんはご飯を鳴いて催促しにきたり撫でてアピールをしたりと、ワガママキャットになりました。2匹は普段、2階で過ごしていますが、寂しくなると階段上から顔を出して力強く鳴き、『上にあがってこーい』と呼びます(笑)」
家に帰る楽しみが増えた。そう話す飼い主さんは、毎日のんびりと過ごす2匹の姿を見られることに幸せを感じているよう。
「暑さや寒さに耐えなくてもよく、蚊に刺されたり耳や鼻がただれてしまったりするなどの心配もなくなってよかったです」
クロちゃんたちのニャン生は、一世一代の命を全うする地域猫を社会全体でどう守っていくかを考えるきっかけにもなるはず。より家慣れが進んだ先で、2匹がどんな仕草や行動を見せてくれるのか、今後も見守っていきたいものです。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)