繁殖場から保護されたミックス犬は先天性の動脈管開存症 手術中に止まった心臓 2カ月半という生涯を全力で生きた
無垢なまん丸の瞳と真っ白のフワフワの毛並みがかわいらしいミックス犬のトキくん。生後1カ月半ほどにして、繁殖場から保護されました。
ちょこちょこと楽しそうに動き回り、オモチャで遊ぶのが大好き。他のワンコとも仲良く遊べるお利口さんです。
■生まれつきのPDAという持病
トキくんには生まれつき、PDA(動脈管開存症)という持病がありました。お母さんのお腹の中にいるときに胎児循環を維持するためにある動脈管は通常であれば生後2~3日で閉じます。しかし、出生後も閉鎖せず残存するのがPDAで、一説には70%が1歳未満で心不全を発症すると言われる恐ろしい病気です。
トキくんを保護した福岡県のボランティアチーム、わんにゃんレスキューはぴねすでは、PDA完治を目指して慎重にお世話し、めでたく完治した後は幸せな犬生へと繋げてあげたいと考えていました。
■迷わず手術を実施。しかし…
冒頭の通り、保護当初から元気いっぱいのトキくんでしたが、心臓はかなり悪く、保護メンバーがトキくんの心臓に手を触れただけでも「心雑音らしき音」がわかるほど。
ただし、PDAをきっかけに併発することが多い肺水腫や肺高血圧症などはなく、無事手術が成功すれば、なんら問題なく幸せな犬生をつかんでくれるはずだと思われました。
保護メンバーは、トキくんが生後2カ月を過ぎたところで獣医師に手術を依頼。トキくん自身も小さな体で手術に挑みましたが、手術後に異変が起きました。
■保護メンバーの前に突きつけられた悲しい現実
手術後、トキくんの麻酔がなかなか解けず、激しいけいれんを起こし、そのまま心臓が止まってしまったのです。蘇生しても、心臓が再び動くことはなく、トキくんはここで短い犬生を終えることになりました。
トキくんの麻酔がなかなか解けなかった理由やけいれんと、心臓が止まった因果関係はわかりません。あの無垢な瞳を閉じてしまったことが、保護メンバーに突きつけられた悲しい現実でした。
■保護されたことでトキくんが得たものは…
小さな体で遊び回り、きれいな瞳で人間や他のワンコを見つめていたトキくんの姿を思い出すと、筆舌に耐えがたい悲しみを覚えます。
約2カ月半というあまりに短い犬生。小さな体で旅立ってしまったトキくんを前に「助けられなくてごめんね」と、保護メンバーは声をかけて見送りました。
悲しすぎる結末ですが、保護されなければ、あのまま繁殖場で人間からの愛を全く受けぬまま旅立ったことでしょう。それを思えば、保護メンバーのここまでの行動は、トキくんの短い犬生の中で幸せなものだったようにも思います。
小さな体で短い犬生を終えたトキくん。虹の橋の向こうでは持病の苦しみから解放されて、いつまでも元気に過ごしていることを祈るばかりです。
(まいどなニュース特約・松田 義人)