若者は政治に無関心?なぜ投票率が低い?行動する東大生に聞いた「就職や生活で手いっぱいに」
衆院選が15日、公示されました。投票・開票日の27日まで選挙戦が繰り広げられています。衆院選のたび話題になるのが若者の投票率の低さです。前回、2021年の衆院選では10代の投票率は43・23%に対して、20代は36・5%と約7ポイント低く、他の世代と比べても低さが目立ちます。若者世代は政治をどう見ているのか。若者の投票率が低いのはなぜなのか。行動する20代の一人に聞きました。
東京大学4年の金澤伶さん(21)。金澤さんは東大の値上げをきっかけに立ち上がった「学費値上げ反対緊急アクション」署名呼びかけ人の一人です。値上げ反対の署名を呼びかけ、大学当局に提出。さらには衆議院第2議員会館で院内集会を開くなどしてきました。金澤さんはなぜ、政治にアプローチし、また今回の衆院選をどうみているのでしょうか。
-そもそも、なぜ金澤さんは学費値上げに対して反対の声を上げ始めたのでしょうか。
金澤さん 「5月に値上げ検討の報道がありましたが、その時点では学生には具体的に何も知らされておらず、学生を無視したかたちで値上げしようという動きがありました。また東大が値上げするとなると、(他の大学に)より一層波及していく問題となるので食い止めなきゃと動きました」
-学費値上げに学生として声を上げるのは分かります。だが、勇気が要りそうです。それでも声を上げた。抵抗感はなかったのでしょうか。
「このタイミングで値上げされたら今の高校3年生が不利益を被りすぎるだろうと思ったんです。それと、奨学金で苦しんだり、学費免除の対象だったりする人は精神的・体力的余裕がない人も多いんです。だからその人たちの声を聞いてちゃんと届けたいと思いました」
-周囲の東大生たちはどういう反応だったのでしょうか。静観する人も多かったのではないでしょうか。
「アンケートをすると8~9割の学生は値上げに反対しています。内心では値上げしてほしくないんです。でもたいていの人は実際に声をあげるところまではしない。周りからの目が気になるというのもあると思うし、SNSやメディアの前で声を上げると『就職に響く』などという言説を気にしちゃう。家族も止めるんです」
-そんな中、6月14日には議員会館で院内集会も開催した。大学当局や文部科学省へ声を届けるというのはよく分かります。しかし、国会議員へアプローチというのはハードルが高いように思います。
「学費値上げ反対緊急アクションでは早いうちからメンバーが自分のつながりのある議員や地元の議員に働きかけるような動きがありました。文部科学省の担当者に要望書を渡すのにどれだけ議員を集められるかなどを考えました」
-かつて安全保障関連法に反対する「SEALDs(シールズ)」の活動が報道された際には「就職できなくなる」などと言われました。金澤さんはそうした不安はなかったのでしょうか。
「学費値上げ反対緊急アクションの真っただ中に就職活動がありましたが、内定は普通に出ました。就職活動に影響がでるというのは眉唾だと思います」
-15日に衆院選が公示されました。20代の一人としてどんな論戦に期待しますか。
「将来世代の視点にたって議論してほしいです。日本は高等教育を無償化する条約を批准しているのに逆行している状態です。大学の運営費交付金の削減も問題です。ポスドクの(不安定な地位や待遇)問題もあります。国立大学を巡る政策は高校生や子どもたちが苦しむことになるので、全体としてどこにどうお金を配分するかという議論が必要じゃないかと思います」
-20代の投票率が低いのは同世代としてどう見ていますか。
「新卒一括採用で就職することで自分の生活に手いっぱいになって、政治への関心や社会との結びつきが薄れてきちゃうのが20代のはじめから半ばなのかなとは思います。(若者の間で)自分が知らないことや専門知識がないことを語ってはいけない風潮みたいなのもある。自分の生活やミクロな視点で『変えたい』『おかしい』というのを直すのが政治だと思っています。その認識のギャップを変えていかなきゃなと思います」
-20代だけでなく、ほかの世代に対して訴えたいことはありますか。
「私たちの訴えていた学費値上げの問題を放置していると、経営の苦しい地方の大学へ、どんどん波及していきます。高等教育の格差と経済的格差がそのまま固定されて格差が再生産されていきます。また今回、東大では大学院生の学費値上げは見送られましたが、値上げは検討されていました。そうなると研究者を目指す人が減る可能性がある。すると、ますます研究力も後退していく。ほかの世代の方にも将来世代のことを考えて一票を投じてほしいです」
(まいどなニュース/京都新聞・浅井 佳穂)