殺処分が決定した野犬 「もう少しだけ待ってくれませんか」 保護団体代表の直談判で運命が変わり始めた

2024年7月、畑の網に絡まり身動きが取れなくなったところを捕獲された野犬がいました。中型犬のオスで、後につけられた名前は「福くん」。

後に福岡県動物愛護センターに収容され、愛護団体からの引き出しや一般譲渡を待ちましたが、名乗りが上がらず収容期限が過ぎました。

殺処分が決定し、「その日」が刻一刻と迫ります。

■「殺処分をもう少し待ってくれませんか」と直談判

このワンコの存在を知った福岡県のボランティアチーム、わんにゃんレスキューはぴねすの代表は福くんを救ってあげたいと、まずは団体の関係先、他団体などにくまなく問い合わせ。しかし、どこを探してもキャパオーバーで福くんの受け先が見つかりませんでした。そこでセンター職員に直談判しました。

「収容期限が過ぎてはいますが、殺処分をもう少し待ってくれませんか。その日までに必ず迎え入れ先を見つけてきますので」

センター側から見れば、ルール上受け入れられるものではありません。しかし、日頃からこの団体の誠実な保護活動の様子を知っており、特例で代表の要望を受け入れることにしました。

■無責任な「エサやり」で行き場を失った野犬が何匹も殺処分に

聞けば、福くんが野犬として生活していたエリアには無責任な「エサやり」をする人がいたとのこと。しかし、この人はエサをあげるだけで野犬たちの世話は全くせず、お気に入りのワンコだけを大事にし、そうではないワンコは保健所に収容されようが、知らん顔だとも言います。

結果的に、病気を抱える野犬、過酷な野犬社会で「下の立場」となった野犬はけがが絶えず、これまでに何匹ものワンコが保健所に収容され、殺処分となってきたとも。

こういった背景もあり、代表はなんとかして福くんを救い出し、何年経っても繰り返される無責任な「エサやり」の状況に一石を投じたい思いもありました。

■福くんに希望を込めて真っ赤な首輪をプレゼント

代表は福くんの迎え入れ先探しに奔走する一方、複数回センターを訪れ、福くんに面会しました。そして、福くんに「必ず助けてあげるからね」と言い、希望を込めて真っ赤な首輪をプレゼントしました。

かわいい首輪をつけられた福くんは、代表の顔を見上げ不思議そうな表情を浮かべます。

「僕、この首輪をつけたままこの先も生きられるんでしょうか」

「それともこの首輪は、僕への『最後のプレゼント』なのでしょうか」

そんな風に福くんが訴えているようにも感じられました。しかし、代表はここでも努めて笑顔で福くんに接し「大丈夫。また来るね」と背中を撫でてあげました。

■福くんの存在を知った多くの人たちが情報を拡散してくれた

福くんの迎え入れ先がなかなか見つからず、代表は夜も満足に眠れぬ毎日を送りましたが、ここで大きな力になったのが団体のブログなどを通じて福くんの状況を知った心ある人たち。ネット上で「殺処分目前」の福くんの存在が拡散されると、続々と「がんばって」「必ず救ってあげてほしい」と応援の声が届きました。

代表の胸に熱いものがこみ上げました。「こんなに多くの人たちが、福くんを助けようと動いてくれている。本当に感謝しかない」と思いましたが、程なくしてさらに吉報が舞い込みました。福くんの存在を知った滋賀県在住の人から「うちにおいで」の声がかかったのです。

■吉報を受け、福くんがぎこちなく笑顔を浮かべてくれた

福くんの殺処分実行まで残り数日。多くの人たちの思いが一つになり、福くんの命を救えたことを心から喜びました。

吉報を伝えるためセンターを訪れ福くんと面会。「『ずっとの家族』が見つかったよ」と代表から声をかけられた福くんは、その笑顔から様子を感じ取ったのか、ぎこちない笑顔で返してくれました。そして、センター職員も「本当に良かった」と喜んでくれました。

代表は後に福くんを滋賀県の里親さんの元まで連れていき、後には家庭犬としてすっかり里親さん家族からたっぷりの愛情を注がれているそうです。一時は殺処分の淵に立たされた福くんですが、これから先の犬生は「福」に満ちた幸せいっぱいのものになることでしょう。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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