歯を剥き出し噛みつこうとしていた野犬 5年という時間が供血犬に変えた 「人に寄り添うことが大好きになった」
数年前、福岡県の北筑後と南筑後の間に位置する山に、大量のワンコが棄てられました。
犬たちは行くあてなく山中を彷徨い、元飼い主とおぼしき人物が週に一度エサをばら撒きに山に来ていました。
こんなわずかなお世話で犬たちの空腹が満たされることは到底ありません。一部が山を下りて民家に姿を現れるようになり、住民が通報。結果的に保健所に捕獲され、次々と処分されていきました。
■人間が近寄れば歯を剥き出しにしていたじゅん
このワンコたちのうちの1匹がじゅん。人間に強い警戒感を抱き、近寄れば歯を剥き出し噛みつこうとしてきました。それでも「じゅんの命を救いたい」と福岡県のボランティアチーム、わんにゃんレスキューはぴねすが保護しました。
「じゅんにとって嫌なことをされたら、噛んで抵抗すれば良い」と思わせてはならないと、慌てず慎重に世話を続けました。
■5年のお世話を経て、人間に寄り添い「他の誰かを助けるワンコ」に成長
それから5年。じゅんは少しずつ団体メンバーと心を通わせるようになり、当初見せていた凶暴な面を見せなくなり、むしろ人間の言うことをよく聞き分けるワンコへ成長。時間はかかったものの、じゅんは人間に寄り添うことを喜びとして感じてくれるようになりました。
そして、2024年7月。輸血が必要な他のワンコのために、供血犬としてデビュー。採血の際もお利口さんに過ごし、人間からの期待を受け笑顔を浮かべながら採血に応じました。
■供血犬デビューと合わせて保護から5年で里親募集
かわいい笑顔もたびたび見せてくれるようになり、雌犬らしく「私レディーなのよ。優しくしてね」とばかりに笑顔で甘えるようにも。
この5年間、団体は人馴れを最優先にしていたため、里親募集をしていませんでした。しかし、供血犬としてデビューしたこと、そしてここまで人馴れが進んだことを受け、ついに里親募集をスタートしました。
保護当初に見せた人間に対する強い不信感から「人間に寄り添うことが大好き」なワンコへと成長してくれたじゅん。本当の家族とで出会える日が、近い将来やってくると良いですね。
(まいどなニュース特約・松田 義人)