慢性腎不全に原因不明の膿胸…保護猫との生活が「癒しに」、楽ではない生活でも「推しへの課金」で惜しみない愛
田辺アンニイさんが愛する猫「さぶくん」との出会いは、2011年頃にさかのぼります。さぶくんは、もともと近所の外猫として暮らしていた一匹で、当時は真っ黒に汚れ、目つきが鋭く、警戒心が強い方でした。餌をやる人々とは常に距離を置いて過ごしていました。
田辺さんは、当時から個人で保護譲渡活動をしており、いつか保護しようと考えていました。しかし外猫の数が多く、他の緊急性の高い猫たちに対応することで手が回らず、機会は訪れませんでした。ある日、田辺さんが緊急保護を予定していた猫を捕獲しようとした際、偶然、「さぶくん」が捕獲箱に入りました。その時、他の猫を優先する必要があり、リリースしてしまったことを田辺さんは今でも後悔しています。
14年、再び捕獲箱に入りました。冬にも関わらず、体はノミの糞で覆われ、強烈な威嚇を見せました。大きな体から発する威嚇に田辺さんは恐怖を感じ、台車に乗せて何とか病院へ運びました。検査の結果、すでに去勢済みで、飼い猫だった可能性が高いことが分かりました。「捨てられて、外で過酷な生活を送っていたのでしょう」と田辺さんは話します。
病院から帰った後、田辺さんは体についたノミの糞や死骸を洗い流すため、キャリーごとお風呂場に連れて行きました。キャリーを開けると、さぶくんは一度大きく「シャー」と威嚇したものの、その後はまるで別の猫のように甘え始めました。田辺さんもさぶくんも、この瞬間に何かを決意したように感じたと言います。
その後、さぶくんは慢性腎不全が発覚し、田辺さんは譲渡ではなく、自分の家族として育てることを決意しました。それから10年。さぶくんは田辺さんの家で過ごし、数百匹の保護犬猫たちを見送りながら、自らも慢性腎不全と闘い続けてきました。さらに、原因不明の膿胸にも5回も見舞われ、何度も生死をさまよいましたが、そのたびに奇跡の復活を遂げました。
さぶくんは、正義感が強く、優しくて強い猫だといいます。犬同士のけんかを仲裁するほどの勇気があり、雌猫たちからも絶大な人気があります。田辺さんは「さぶの愛をひしひしと感じる」と言い、彼の存在が日々の癒しとなっています。
さぶくんとの生活は、決して楽なものではありません。毎月の医療費もかさみますが、田辺さんは「推しへの課金」と冗談を交えながら、愛を惜しみなく注いでいます。さぶくんとの出会いは、田辺さんの人生をさらに豊かにし、日々その存在に助けられているそうです。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)