「身ひとつで脱出できる」航空機事故きっかけで発売、大容量ポケット付きパンツ 女性服のポケット問題解消!?
「うちのベーシックラインは、今年1月の飛行機事故をきっかけにできました」。アパレルメーカーの社長がSNSに投稿した、新商品の開発秘話が注目を集めています。
「弊社ではカジュアル服は作っていませんでしたが、事故を機にベーシックラインを始めました。羽田の飛行機事故で男性はポケットに貴重品を入れて脱出できましたが、女性はポケット自体がなかったり、あっても小さいサイズだったりで、大切なものを沢山諦めなければいけなかったからです」(投稿から引用)
■「ここまで必要とされていたのか」
投稿したのは株式会社Alyo(アルヨ、本社・東京都港区)の社長、大橋茉莉花さん。
同社が運営するブランド「CINEMATIQ(シネマティック)」は「毎日を快適に、女優のようにエレガントに」がコンセプト。何よりの特長は、ワンピースやスカートなど、ほぼ全ての商品に大きめのポケットがついている点。美しさと機能性を兼ね備えていることが女性たちに受け、ファンを増やしていました。
そんな中、今年1月に羽田空港で航空機衝突事故が発生。事故を機に広く知られるようになったのが、非常脱出時は手荷物の持ち出しが一切禁止ということでした。
しかし女性服のポケットは男性用に比べて小さかったり、少なかったり。フェイクポケット(飾りポケット)が多いことも現状です。万が一に備え、空の旅では大きなポケットがついたカジュアルな服が必要ーー。大橋さんは思いを強くしました。
「自社のエレガント路線だけではカバーしきれない。フライト時の安全を考えるとカジュアルな服を出した方がいいんだなと学び、お客さまからの声も多かったのでベーシックラインを作りました」(大橋さん)
大手航空会社などが発信する内容を参考に、緊急脱出スライド(シューター)を使うことを想定してデザインを考案。パンツのサイド部分にある大容量ポケットは、「600mlボトルが入る」という深さがあり、避難中に中身が落ちないようにファスナーが付いています。長財布、パスポート、スマートフォン、自宅の鍵などが収まるサイズです。「貴重品を全てポケットに入れて、身ひとつで脱出できるように考えて作っています」(大橋さん)
冒頭で紹介した大橋さんのSNS投稿は拡散し、商品の中には品切れになるものも。
「そもそも女性の服にはポケットがないよねというご意見がすごく集まっていましたが、防災という面でここまで必要とされていたのかという発見がありました。ライバル、競合は増えると思いますが、各社ともポケットはどんどんつけていっていただきたい。ポケット問題が解消したとき、弊社はまた別の問題に取り組んでいるんだろうなと思います」(大橋さん)
現在発売中のベーシックラインのパンツは、ストレッチカーゴパンツ(10980円)、コットンストレートパンツ(9980円)、ストレッチデニムライクパンツ(10980円、いずれも税抜き)の3種。売り切れの商品は11月中旬に再販予定。色やサイズなど、詳細は同社ECサイト「Pinup Closet」で。
■国土交通省や航空会社「手荷物は持たないで」
今年1月に羽田空港で起きた事故では、旅客機側の乗客乗員379人全員が機体から避難し、世界中から「奇跡の脱出」などと注目を集めました。
国土交通省は非常脱出時の注意点として、「手荷物の持ち出し禁止」「ハイヒール等の鋭利なものは身につけないこと」などを掲げ、「乗務員の指示に従って、迅速かつ安全に旅客機から脱出して安全な場所まで避難することが重要」としています。
日本航空でも緊急脱出時のお願いとして、「脱出の妨げとなりますので、手荷物は一切持たないでください」とし、「脱出の際、手荷物をもっていると、通路をふさぎ、他のお客さまの脱出の妨げになる可能性があります」「手荷物やハイヒールは、スライドを傷つけ、スライドの空気が抜けて使えなくなる可能性があり、後からくる人が脱出できなくなります」と注意を呼びかけています。
事故直後からSNS上では「荷物は持ち出せないんだ」「サコッシュもスマホショルダーもダメ」「ウエストポーチもだめみたい」などの声が相次ぎました。また、空の旅に慣れた人たちからは「飛行機に乗るときはスカートじゃなくパンツを」「ヒールのある靴も履かない」「飛行機に乗るときはファスナー付きポケットがある服を」「パスポートと財布はいつもポケットに入れている」「脱出後のことも考えて常備薬はポケットに」「尻ポケットには物を入れない」「シューターを傷つけるから尻ポケットは使わない」などの声が上がっています。
(まいどなニュース・金井 かおる)