夫のうつ病→休職で家計がピンチ 「3人の子どもの教育費はどうすれば」…悩む妻への「お金」に関する助言は?
大黒柱の夫が突然のうつで働けなくなった場合、世帯の収入がダウンしてしまいます。子どもがいる場合、今後の教育費が気になるところです。大黒柱の収入が途絶えた時、家族はどのようにすればいいのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの加藤葉子さんに過去の事例を交えて話を聞きました。
ー実際に相談を受けた家庭の家族構成はどのようでしたか
5人家族で夫婦ともに40代でした。お子さんは3人で、上から中学1年生、小学5年生、3年生です。相談に来られたのは奥さんで、単身赴任している夫がうつ病と診断されて休職することになったという話でした。
奥さんも仕事を辞めたばかりで子育てに専念しようというタイミングだったため、これからどうしたらいいかわからないと半ばパニック状態だったのです。
ーパニックの理由は何だったのでしょうか
夫が休職し収入が減ってしまうので子どもの教育費はどうしたらいいのか、自宅のローンの返済はどうしよう、自分は働いたらいいのかなど、多岐にわたっていました。一度に多くのことを考えなければならず、これからの不安でいっぱいだったのでしょう。
相談に来られた当初はそのような状態だったので、まずは落ち着いて考えられる状況を作るのが最優先でした。まず夫の状況を確認し、すぐに収入が途絶えるわけではないことや、傷病手当の制度が使えることをお伝えしました。
それでも残業代はなくなるし、子どもの世話をしつつ離れて住む夫を心配することで、何をどうしたらいいのか不安な状態でした。
ーその状態からどうやって整理していったのでしょうか
次にお子さんの教育費について整理をしていきました。まず要件を満たしていれば、就学援助があります。また高校生になれば、「高等学校等就学支援金制度」、専門学校や大学に進学する場合は、「国の高等教育の修学支援新制度」など授業料メインとする公的な支援が受けられるので、すべてを家計から捻出する必要はないとお伝えしました。
お子さんを大学に行かせられないと気にされていたので、この情報を聞いて少し落ち着つかれたようです。
国の高等教育の修学支援新制度では、収入が低いご家庭など条件を満たせばお子様一人当たり私立大学自宅で4年間で最高約490万円の支援額、国公立の下宿であれば、4年間で最高約563万円など大きな支援をうけることができますので、そのご説明をさせていただきました。
とはいえ相談者さんは学資保険に入っておらず、夫の奨学金を返済している状況だったため、小・中・高校の習い事や塾代を考慮すると公的な支援制度だけですべて賄えないこともご説明しました。
ー家計の支出はどのような状況だったのでしょうか
支出は無駄のないシンプルな家計でした。しかし夫が休職となることで家計に余裕がなくなります。相談者さんが無職のままではなく、働いて収入を増やすことは必須になってきます。ただ前の会社を辞めたばかりだったので、職探しは慎重に考えなければならなかったのです。
しかし夫は正社員で働いていたため、傷病手当なども含め、急に収入がなくなる状況ではありません。家計の状況から考えて2・3年は夫の状況を見守りながら、パートなどの職探しをおこない、長期目線でキャリアアップや正社員を目指すなどステップアップしていくことを提案しました。
ーその後の相談者はどうなられたのですか
最初に相談に来られてから1年が経ち、夫は完全復帰とはいわないまでも継続して働くことができています。以前よりも負荷の少ない仕事をさせてもらったことで、収入は減ったものの精神的にはだいぶ落ち着いたようです。
相談者自身も年収200万円ほどの仕事を見つけて、働きにでています。仕事があるという点が相談者の心の余裕も生んだのか落ち着いて生活を送っており、今は資格取得に向けて勉強もスタートしているそうです。
突然の大黒柱がうつで働けなくなると、教育費やローンなど将来に対して不安になってしまうのも仕方ありません。そういう時こそ専門家に相談し、国の支援や制度は何を活用できるのか、家計から見て何を優先していけばいいのかを整理して対策を打つことが大切です。
◆加藤葉子(かとう・ようこ)女性とシングルマザーのお金の専門家 NHKのコラム執筆を機に起業し、全国のママ向けにオンライン講座・男女共同参画センターなどの講師・FPの育成などを行っている。
(まいどなニュース特約・八幡 康二)