台風接近!特別警報も出そうなのに「タクシーを使ってでも出社しろ」 その指示「従わないといけないの?」【社労士が解説】
Aさんが勤める会社では年に4回、講師を招いたオンラインセミナーを開催していました。今年の夏のセミナーはAさんが担当。話題の講師を呼べたこともあり、予想より多い参加者がありました。
しかし好評を博した夏のセミナーをめぐって、Aさんには納得できないことがありました。それはセミナー当日に大型台風が近づいていたことです。オンラインセミナー開催日に、Aさんの会社のある地方では、大雨や暴風が見込まれ、特別警報が発表される可能性があるともされていました。
鉄道が計画運休される可能性もあり、テレビでは不要不急の外出を控えるよう呼び掛けていました。Aさんはなんとかオンラインセミナーを自宅から開催できないか考えます。しかし、問い合わせの電話番号が会社の番号になっているため、誰かが会社で待機しなければなりません。
Aさんが上司に相談すると「タクシーを使ってでもいいから出社しなさい」と指示され、Aさんは出社することに。最終的には台風の影響は少なく、無事にセミナーは開催されましたが、特別警報が予想されるような状況下で、このような上司の指示に従うべきだったのか、疑問が残っているそうです。
社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに詳しく聞きました。
ーAさんは上司の指示に従い、タクシーを使ってでも出社しないといけなかったのでしょうか。
結論から言うと、タクシーが動いているのであれば出社しなければなりません。タクシーも公共交通機関の一種なので、上司の指示は必ずしも無茶というものではないのです。これが仮に「自転車で出社しなさい」という指示であれば危険なので問題視されるでしょう。
ーでは自家用車で出社しろと言われた場合はどうなりますか
これを一概に判断するのは難しいです。普段から車に乗っていない人や、会社までの道を運転したことがないという人に自家用車での通勤を指示するのは、危険を伴うので問題があると判断される場合があります。
したがって普段から自家用車で通勤している人であれば、出社する方向で考えた方がいいでしょう。もちろん大きな地震や洪水といった災害により、安全が確保できないようであれば別です。
ー有給休暇を取得して休むこともできるのでしょうか
合理的理由があると判断されれば、有給休暇を取得して休むこともできます。本来であれば前日までに申請をする必要がありますが、やむを得ない理由があれば当日の申請でも取得可能です。
ただ、会社側には時季変更権があります。これは従業員が申請した有給休暇を変更できる権利です。企業は代わりの人材が確保できず、事業の正常な運営を妨げると判断した場合、権利を行使できる場合があります。今回のケースでは重要なオンラインセミナーということなので、時季変更権が認められる可能性があります。
確かに現在の仕組み上、Aさんは出社しなければならない状況ではありますが、通勤途中にケガをしては後々問題になってしまいます。そのため、気象条件が大きく変わっても無事にオンラインセミナーが開催されるように、あらかじめ対策を実施しておくべきだと考えます。
◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)