真夏のマンションに猫を置いて勝手に退去→1ヶ月半も放置で元飼い主を刑事告発 NPO代表「死の直前まで追い込み許せない」

賃貸人や管理会社に告げずに居住する賃借物件を退去し、給水や給餌の準備もなく、飼い猫を約1カ月半置き去りにしたとして、元飼い主が動物愛護法違反の容疑(遺棄)で大阪府警生野署に10月29日、刑事告発されました。告発したのは、動物保護団体のNPO法人「アニマルレスキューたんぽぽ」(以下、たんぽぽ・大阪)の副理事長で大阪弁護士会副会長の松尾吉洋弁護士で、当日受理されました。

今回刑事告発に踏み切った理由について、猫を保護した「たんぽぽ」の代表本田千晶さんは「暑い密室に1カ月以上も置き去りにしてミラクル(猫)を死の直前まで追い込みました。動物遺棄は生命、身体を危険にさらす行為であり許されない悪質な犯罪です。虐待犯を野放しにしない、逃げ得させない、そして第2のミラクルの悲劇を繰り返さないためにも刑事告発を行いました」と話します。

本田さんによると、ミラクルちゃんを保護したのは8月31日。マンションの管理会社から「何も言わずに勝手に引っ越した住人の部屋に猫が置き去りにされている」とたんぽぽに連絡が入り、すぐに現場に駆け付けたとのこと。部屋の中はビールや酎ハイなど大量のお酒の空き缶と食べかす、脱いだままの服など汚い不潔な状態。ミラクルちゃんは水を飲もうとしたのか、便器の横で力尽きて動けなくなっていたところを保護し病院に連れて行ったといいます。

訪れた現場は、飼い主が管理会社に退去することを告げずに引っ越してしまったという部屋。家賃が支払われず、管理会社が部屋を確認したところ、置き去りになった猫を発見し、たんぽぽに保護の依頼をしました。

■獣医の診断「著しいネグレクト状態と飼い主としての無責任な行動により動物虐待である」

獣医の診断書によると、ミラクルちゃんの状態について、発見時は「全身毛玉だらけで毛玉にふん尿がしみつき悪臭が酷い状態。マンションの一室に1カ月以上閉じ込められ、部屋の温度は40度以上あったと思われます。水も食べ物も与えられず飼い主の食べ残した弁当などを食べてなんとか生き延びていたのでしょう。水を飲みたくて、もうろうとしながら、トイレの横で力尽きた姿でした」と指摘。

さらに「全身ショック、意識はほぼなく眼球は開いたままの昏睡状態。極度の脱水と長時間の高体温による開口呼吸により肺水腫…心臓にもかなりの負担があり、脳障害が著しく、生還は不可能と感じました。右上頭部、左後肢に打撲による内出血あり。血液検査では白血球が正常6000~14000くらいのものが900しかなく、体内の免疫機能がほとんど働いていない、亡くなる寸前の状態でした」などと診断し、「著しいネグレクト状態と飼い主としての無責任な行動により動物虐待であると考えます」と意見を述べています。

現在、入院中というミラクルちゃんに関しては「体の腫れ、浮腫が取れたらガリガリになりました。壊死した傷はマシになりましたがまだまだ完治まで時間はかかります。元気にはなりましたが1カ月以上、暑い部屋に置き去りにされていたため、かなりの栄養失調でとにかく食べて体力をつけさせることが大切な状態です。心臓が悪いので引き続き治療と終生にわたり医療食が必要です」と本田さん。一方で、脳傷害で歩けなくなり、仮に歩けるようになるとしてもかなり時間がかかると言われていたのですが、自力で立ち上がりご飯を食べるという“奇跡”が起きたそうです。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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