預かりボランティアに迎えられた心臓病の子猫 一家に囲まれ穏やかな日々 ある朝、大好きなパパさんのベッドの下で…
2022年4月14日。千葉県内のとあるエリアに、妊娠後期と思われる外猫が大きなお腹を抱えてヨタヨタと歩いていました。この外猫に「無事に出産をしてほしい」と考えた地元の保護団体・ねこ友会のメンバーは、迷わず保護。
保護日の「4月14日」にちなんで「よいしょママ」と命名し、その出産のサポートをすることにしました。団体メンバーのサポートと優しい思いを受けて、よいしょママは5匹を出産。しかし3匹は間もなく死んでしまい、オス・メス各1匹の子猫が残されました。団体メンバーはひどく心を痛めましたが、5匹の命を音楽の「五線譜」に見立て、残った2匹に素敵な名前をつけてあげることにしました。
メスの子猫は、背中の黒い被毛に白い丸模様があり、この様子が五線譜の「ヘ音記号」に似ていたことから、そのまま「ヘ音記号ちゃん」と名付けられました。オスの子猫は、しなやかにクルクルと回る尻尾の様子がこれまた「ト音記号」に似ていたことから、「ト音記号くん」と名付けられました。
■イケメンなのにおっちょこちょいだったト音記号くん
ユニークな名前と美男美女ぶりで、2匹はすぐに団体関係者の間で人気者となりました。特にオスのト音記号くんは譲渡会ポスターなどに何度も採用されたことで、団体関係者の間はある種「保護猫の象徴」的な見られ方もしていました。
一方、当のト音記号くんは、そのイケメンぶりに反して、どこかおっちょこちょいなところがありました。食べ方が下手でいつも鼻の下が汚れていたり、運動神経が鈍かったり、こっそり何かをあさろうとしたつもりが、すぐに見つかったりしていました。
しかし、こんなところもまたト音記号くんのかわいさで、そのおっちょこちょいぶりもまた、みんなを癒やし続けてくれました。
■一生、心臓病の投薬を続けなければいけなかった
ただし、ト音記号くんは生まれながらにして心臓病を抱えており、日々の投薬が欠かせませんでした。
そのため、団体では積極的にト音記号くんの里親募集はせず、持病があってもト音記号くんができるだけ穏やかに過ごせるよう、団体提携の預かりボランティアさんが「ママさん代わり」となり、日々お世話し続けました。
それでも、当のト音記号くんは、この預かりボランティアさんのお家がお気に入りの様子。毎朝4時頃になると、この家のパパさんの顔にオモチャを置きに来て「早く起きて遊ぼうよ」アピール。このおかげでパパさんもすっかり早起き体質になったりと、ト音記号くんは家族同然で過ごしていました。
■その日は朝はパパさんの元にオモチャを持って来なかった
2024年7月のある朝。ト音記号くんが朝4時になっても、パパさんの顔のもとにオモチャを持ってきませんでした。「おかしいな」と思う預かりボランティアさんでしたが、部屋中を探してもト音記号くんの姿がありません。
「ト音記号くん!」と声をかけても返事がなく、さらに部屋の隅々を探してみたところ、ト音記号くんはお父さんのベッド下で眠るように息を引き取っていました。
■虹の橋の向こうではきょうだいみんなで音楽を奏でてね♪
ずっと付き合い続けなければいけない持病でしたが、数日前の定期検査では特に問題がありませんでした。しかし息を引き取った原因はやはり心臓病だったようです。
団体関係者、団体支援者はト音記号くんの突然の死を前に、悲しみに暮れました。ずっとお世話をしてきた預かりボランティアさん家族は旅立ったト音記号くんを前に、こんなふうに声をかけて見送りました。
「今までお世話させてくれてありがとうね。あと、いつもパパに甘えてくれてありがとうね。虹の橋の向こうでは、きょうだいと再会してみんなで一緒に音楽を奏でてね。ヘ音記号ちゃんも、こっちの世界でみんなのかわいい演奏に参加するからね」
(まいどなニュース特約・松田 義人)