駐車場の片隅から聞こえる「ミャー」 屋根の雨どいで動けなくなっていた子猫 消防車も出動した2日間の捜索劇の結末は
2024年6月。千葉県のJR我孫子駅北側の国道沿いにある大型ショッピングセンター「あびこショッピングプラザ」の駐車場の片隅から、「ミャー、ミャー」という子猫の鳴き声が微かに聞こえてきました。
駐車場は4階・5階・屋上の3フロア。相当な広さですが、かなりの高さです。誤って子猫が駐車場から落ちることがあってはいけません。鳴き声に気づいた心ある夫婦は、まずショッピングセンター内のスーパーの従業員に相談。この従業員からセンターの警備員に情報が伝わり、さらに地元の保護猫団体・ねこ友会に子猫の捕獲協力の依頼が入りました。
■子猫はどうして駐車場に迷い込んだか
子猫はどうしてこんなところに紛れ込んだのでしょうか。
駐車場には他に家族らしき猫は見当たりません。考えたくはないですが、仮に人間が故意に駐車場に遺棄したか、雨どいに子猫を置いたのだとすれば、これほどの悪意はありません。
ともあれ、今は子猫の命を救うのが先決です。駆けつけた複数の団体関係者、発見者夫婦、センター職員らは手分けして子猫の捕獲に乗り出しました。しかし、さっきまで聞こえていた「ミャーミャー」という子猫の鳴き声が全く聞こえなくなってしまいました。
「まさか下に転落したなんて」と、最悪の事態を想像し背筋がゾッとしましたが、どこかに隠れていることを祈って、この日は撤収。翌日から改めて子猫を探すことにしました。
■再び姿を現すも、その場所は屋根の雨どい…
翌朝になり、改めて現場の駐車場付近に「ミャーミャー」という微かな子猫の鳴き声が聞こえました。しかし、その鳴き声はどうも駐車場の外部からのもので、よく見るとなんと子猫がショッピングセンター外壁にある屋根の雨どいに行き場をなくして所在なく佇んでいます。
高さは3階ほど。「これはまずい」と関係者が消防署に通報。程なくして消防車が駆けつけてくれましたが、これに驚いた子猫は雨どいを行ったり来たり。子猫を刺激しないように捕獲のタイミングを見計らっていましたが、やがてまた子猫は姿を消してしまいました。
ここでもまた「雨どいから真っ直ぐに落ちてしまったのではないか」と暗くなる関係者でしたが、夕方になって再び通報が入ります。
今度は再び駐車場のほうからのもので、カギの閉まったダクトスペースに子猫が佇んでいると言います。
■警備員が子猫をキャッチし無事捕獲!
子猫がいるダクトスペースに、ゆっくりゆっくり近寄っていった警備員。子猫が一瞬油断した隙に、子猫の体をキャッチ。無事に子猫を捕獲することができました。
関係者は全員ホッと胸を撫で下ろしました。
■保護後、優しい里親さんに迎えられ甘えん坊さんに
その後、子猫はそのまま団体に保護されることとなりました。よく見ると、子猫は茶トラのオスで推定年齢1カ月半ほど。「ニャオンニャオン」という鳴き声が大きく、この声量もまた捕獲を成功させた要因の一つでした。
その後すっかり元気になった子猫の元に、「うちにおいで」の声がかかり、現在は優しい里親さんの家で甘えん坊さんになっているそうです。
2日間、多くの人たちが力を合わせて救い出した小さな命。心ある人たちの思いを、さらに昇華させるべく幸せな猫生を歩んでいってくれることを願うばかりです。
(まいどなニュース特約・松田 義人)