「何百匹もの野良猫を捕獲、大量殺処分」動物愛護団体が沖縄の村と獣医らを刑事告発 村「住民らの苦情や希少なコウモリ捕食被害で野良猫を適正管理」
沖縄県の南大東村役場は何百匹もの野良猫を捕獲をし、同県動物愛護管理センターに送らず、「獣医師」が大量に殺処分していたとして、「全世界の犬猫の殺処分を廃止にする会」(代表・荒木淳、福岡市)と「動物ボランティアCat28(キャットにゃ~)」(代表・溝淵和人、静岡県浜松市)の2つの動物愛護団体が、同村長、同村役場関係者とNPO法人「どうぶつたちの病院沖縄」の理事長に対して、動物愛護法違反の容疑で県警那覇署に刑事告発し、受理されたことが分かりました。
■2023年11月那覇署に動物愛護法違反の容疑で刑事告発、24年10月受理
告訴状などによると、南大東村役場関係者や理事長らが、2019年度(平成31年度)から2022年度(令和4年度)までの間に少なくとも398匹の所有者不明猫(野良猫)を捕獲器などを使って捕獲し、少なくとも211匹を独断で殺処分した疑い。昨年11月22日に2つの動物愛護団体が那覇署に刑事告発し、今年10月1日に受理されたとのこと。
今回の容疑について、告発した団体の荒木代表は「南大東島での野良猫の殺処分は保健所の殺処分とは違います。行政が業者に野良猫の捕獲を委託し、捕獲後役場に5日公示して譲渡がされなければ委託業者が島内で薬殺しました。薬殺した獣医も告発しました」などと説明します。
■村は「猫の適正飼養に関する取り組み」を公表 捕獲・殺処分の正当性を主張
一方、今回の容疑について、同村がホームページで「猫の適正飼養に関する取り組み」として、捕獲・殺処分の正当性を次のように公表しています。
「本村では以前、村民によるみだりな餌やりによりネコが異常に増えて島の全域に多数の猫が生息し、住宅街には更に多くの野良猫が生息している状態でした。さらに、ノミ刺咬症(しこうしょう)などの健康被害やふん尿による悪臭、鳴き声で眠れないなどといった生活面での被害が発生し、住民から南大東村役場に多くの苦情が寄せられていました。また、野良猫による住民への咬傷(こうしょう)事故により重症化した方が沖縄本島の病院に緊急搬送されるといったこともあり、村としても早急に猫による被害対策を実施しなければならない事態になりました。加えて、大東諸島固有の希少な野生動物であるダイトウオオコウモリやダイトウコノハズクが猫に捕食される事例が報告されるなど、希少な野生動物の保護の観点からも飼い猫や野良猫の適正管理を進める必要に迫られました。
猫の保護に関しては当初、沖縄県動物愛護管理センターへ相談をし、県への収容を実施していましたが、平成28年より収容ができなくなったことから、委員会を設置し猫に関する問題に対して協議を重ね、平成31年からは「南大東村飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例(平成30年12月14日条例第16号)(以下、「条例」という。)」を施行し、本村は本格的な猫の適正飼養に関するルールを定め、住民の飼い猫の適正飼養を推進するための事業を実施しました。
条例施行と合わせて、令和元年から令和4年6月にかけて、全額、村の補助による猫の避妊去勢手術を実施し、現在全ての飼い猫の不妊化及びマイクロチップ装着、予防接種、ウイルス検査の上、全ての飼い猫の飼養登録が完了しました。補助事業は終了していますが、飼い猫の登録は継続して行っています。飼い主不明の猫については、条例に沿って保護し、南大東村役場において公示を行い、飼い主及び譲受希望者を募る方法をとっております。
飼い主及び譲渡希望者もない場合にはやむを得ず、できる限り苦痛を与えない方法で安楽死の処置を行いました。今後も本村では、飼い猫の完全室内飼養を推進し、猫による人への健康被害や生活被害がなくなり、交通事故等で死亡する猫『ゼロ』を目指し、ひいては猫によって捕食被害を受ける島の財産である希少な野生動物も安心して暮らせる島作りを目指していく所存でございます。また、飼い主不明猫については飼い主・譲受希望者がない場合には沖縄県動物管理愛護管理センターに相談し、できる限り全ての猫を譲渡するよう努めています。」(一部略)
■団体代表「愛護動物の野良猫を行政自ら積極的に捕獲して殺処分することは犯罪行為」
さらに同村役場の主張に対して、荒木代表は「そもそも、南大東村に生息する外猫は野良猫であることを環境省が認めています。野良猫は愛護動物と定められており、動物愛護管理法(動物愛護法)の適用を受けます。動物愛護管理法第44条では、愛護動物をみだりに殺傷した場合、5年間以下の懲役もしくは500万円以下の罰金が科されます。百歩譲って、野良猫がダイトウオオコウモリを捕食しているとしても、愛護動物である野良猫を行政自ら積極的に捕獲して殺処分することは犯罪行為です。南大東村の主張は『違法性阻却事由(そきゃくじゆう)※』にはあたりません」などと訴えています。
※違法性阻却事由: 刑法各則に規定された犯罪の類型 (構成要件) に該当する行為を特別に許容し正当化する根拠のことをいう。
(まいどなニュース特約・東条 青波)