会社はケチ? テレワークでかさむ電気代や通信費が補填されない理由【社労士が解説】
Aさんが勤めている会社ではワークライフバランスに力を入れるようになり、テレワークで働く人が増えました。勤務実態の確認などさまざまな課題があるものの、大きなトラブルもなく導入が進んでいます。Aさんもテレワークを利用して、週に3日は自宅で仕事をしています。
自宅でテレワークを初めて1か月が過ぎたころ、Aさんは奥さんから「あなたが家で仕事をするようになってから、電気代があがったんだけど…」と言われます。確かにAさんは一日中パソコンに向き合って仕事をしています。動画編集の仕事をしていることもあり、夜に電源を入れたまま仕事を終えることもありました。
事情を会社に説明し電気代の差額分を支給してもらいたいと要望したものの、会社からの返答は「NO」でした。自宅のネット回線も仕事で使用しているのに、電気代や通信代の補填はしてくれません。会社はこれらの費用を払ってくれないものなのでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに詳しく聞きました。
ーテレワークでかかる電気代や通信費は会社が支払うものなのでしょうか
テレワークでかかる電気代や通信費を、会社に支払うように明確に義務付けた法律はありません。多くの企業で導入されている通勤手当も、実は法的に義務付けられたものではなく、そういった意味ではテレワークでかかる電気代や通信費は、通勤手当と同じような扱いです。
現実的にはテレワークを実施した場合、電気代や通信費について労使間の取り決めが無いとトラブルになりかねません。そのため就業規則に「テレワーク手当」などとして記載する会社が増えています。
おそらくAさんが勤める会社では、就業規則にテレワークにかかわる手当が記述されていないため、会社は支払わないという返答をしたのでしょう。
ーテレワーク用に文房具やパソコンを用意した場合はどうなりますか
テレワークで使用する備品や消耗品は、業務をおこなう上で必要だと判断されれば、経費として計上できると考えられます。パソコンや周辺機器も同様です。ただし、もともと所有していた自身のパソコンを業務で使用することになったとしても、法律的に費用を支払う義務はありません。こちらも就業規則などでのルール化が不可欠です。
ー一方で通勤手当などは減ると思うのですが、どのように処理されることが多いでしょうか
こちらも就業規則次第です。たとえば、〇日以上出社する場合は定期、それ以下は往復の日数×実費というふうに定められることが多いです。もし実態として通勤していないのに通勤手当が支払われていると、是正対象とされる場合もあります。テレワークの導入に合わせて、実態に即した通勤手当の設定も求められます。
◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)