会社の文房具がどんどん消える謎…問い詰められた上司の告白は?備品を無断で持ち帰るリスク【弁護士が解説】
貿易会社の総務部で働くAさんは、最近ある部署の備品消費に違和感を覚えていました。総務部は他部署と比べて、シャープペンシルやホッチキスの替え芯の発注量が突出して多かったのです。特に係長のBさんが異動してきてからその傾向が顕著になっていたのです。
そこでAさんはBさんに、備品の使用量の多さについて特別な理由があるのか尋ねました。するとBさんは動揺していたため、さらにBさんが異動してきてから使用量が増えたことも伝えると、彼は観念したように深いため息をつき「実は...自宅に持ち帰っています」と告白を始めます。どうやらBさんは、自宅でも備品のシャープペンシルやホッチキスを使っているようです。
Bさんの行為は、金額が軽微とはいえ明らかな不正です。Bさんにはどのようなペナルティが下されるのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに伺いました。
ー会社の備品を持ち帰った場合、罪になるのでしょうか
会社の備品を無断で持ち帰る行為は、法的に罪に問われる可能性が高いです。これは会社の財産を不正に取得する行為であり、刑法上の犯罪に該当します。
ー罪になるとしたらどのような罪が考えられますか
主に2つの罪が考えられます。
・窃盗罪(刑法第235条):他人の財物を窃取する罪です。
・業務上横領罪(刑法第253条):業務上自己の占有する他人の物を横領する罪です。
今回の場合、Bさん自身が占有する会社の備品を持ち帰っていたのであれば、業務上横領罪に該当する可能性が高いと考えられます。
ーBさんにはどのような処分が下されるのでしょうか
刑事罰としては、業務上横領罪の法定刑は10年以下の懲役です。ただし実際の量刑は被害額や悔悛の情などを考慮して決定されます。
一方で、刑事罰とは別に会社からの処分が下されるでしょう。具体的な処分は、持ち出した備品の価値、頻度、会社の方針などを総合的に判断して決定されます。さらに民事上の責任として、会社に与えた損害の賠償を求められる可能性もあります。
このケースとは異なりますが、過去には郵便局員が切手を着服し、懲役3年の実刑判決が言い渡された例もあります。164回にわたって約1億7,600万円分の郵便切手を他店に売却して代金を着服していたのです。
Bさんの場合はここまで頻度や金額が多くないため、同じような判決にはならないでしょう。とはいえ会社としては適切な調査をおこない、公平かつ適切な対応を取ることが重要です。また、再発防止のための社内教育や管理体制の見直しも検討すべきでしょう。
◆北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないといわれる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)