子どものサッカー合宿で20万円!? 親子で味わった涙の1軍争奪戦と、課金地獄トレーニングキャンプ

地元のサッカーチームに軽い気持ちで入部したものの、まさかここまで大変な道を歩むことになるとは、一体誰が予想できたでしょうか。当初は「週末の運動不足解消」「親子で共有する楽しい時間」が目的だったサッカー。しかし、学年が上がるにつれ状況は一変。交流試合が増え、チーム内で「1軍」「2軍」の選抜が行われるようになり、親子のサッカー生活は熾烈な競争の場と化していきました。

■楽しいはずのサッカーが…

東京都に住むRさんの長男は、地元のサッカースクールに入っていました。低学年の頃は、ボールを追いかける長男の無邪気な姿に癒され、練習後の冷たいジュースが何よりのご褒美。勝ち負けなんて二の次でした。

しかし、高学年になると、チーム内で公式戦に向けた「1軍」と「2軍」の区分けが始まりました。高学年メンバー28人の中から、試合に出場できるのは十数名の1軍だけ。2軍のメンバーは試合にほとんど出場できない厳しい現実がありました。公式戦の数日前に行われる選抜発表は、親子ともに緊張の瞬間となります。

「1軍」選抜の基準は、高いポテンシャルのみならず、日ごろの練習に休むことなく参加している必要がありました。そして練習態度にやる気、チームワーク、リーダーシップがとれること…などのバランスで選ばれます。

夏休み前の公式戦に向けて、なんとしても「1軍」に選抜されたい…。Rさんの長男は必死に練習を重ねました。友達からも「お前、今度一軍かもな」と言われ、自信を持って迎えた発表の日。しかし、コーチの口から告げられたのは残酷にも「2軍」の通告でした。

Rさんがお迎えに行くと、「おれ、2軍だった」と話す長男の瞳には涙が。「こんなに頑張ってきたのに、なぜ?」という思いが痛いほど伝わってきたといいます。Rさんは、何を言って慰めればよいのか分からず、ただ「今回はたまたまだよ」と声をかけるしかありませんでした。

「たかが子どものサッカー」だとは分かっていても、長男の顔から笑顔が消えるのを見ることは非常につらい状況でした。Rさんはただ「長男の努力が報われて欲しい」だけなのです。競争の中で精神的な強さを身につけることは大事なことだけど、「本当にこれが子どもに必要な経験なのか」と葛藤する日々が続きます。

■食費を切り詰めて参加させたトレーニングキャンプ

さらに追い打ちをかけたのは、夏休みに行われた特別キャンプです。夏休みは海外の有名チームや国内のプロ選手が主催するトレーニングキャンプが各地で開催されます。

Rさんの長男も、貴重な経験が得られると期待して、特別キャンプに参加することにしました。Rさんも「いい経験になるだろう」と楽しみにしていたのです。ところが、宿泊費込みの参加費は3日間12万円と知って驚愕。開催地までの移動費は別途自己負担です。

さらに長男からは追加で、別の4日間のキャンプにも参加したいと言われました。参加費は約9万円。こちらには宿泊はついていなかったので、近くの宿を個人で手配し、キャンプ地まで保護者が送迎する必要がありました。結局交通費や宿泊費を含めると20万円以上の出費になってしまいました。

Rさんは家族旅行を諦め、食費を切り詰めて長男の希望を優先しましたが、この状況がいつまで続くのか、不安を感じています。軽い気持ちで始めたサッカーが、いつの間にか親子にとって試練へと変わっていました。なお、夏休み後も懸命に練習を重ねる長男ですが、まだ1軍に上がったことはありません。

   ◇   ◇

同じように、子どもの習い事でメンタルをすり減らしている親御さんは少なくありません。ピアノ、野球、バレエ…どの習い事でも親子で抱えるプレッシャーや葛藤があるようです。

▼30代 埼玉県

娘はピアノを習っているのですが、ピアノを習い始めた動機が「発表会でドレスを着れるから!」と、なんとも不純なものでした。全く練習をせず習い事に通う娘と、熱心すぎる先生から発せられる嫌味の言葉。娘は嫌味も感じないので、平然と適当にレッスンに行くだけ。2人の横で見学するわたしの肩身の狭いことといったらありません。

▼40代 兵庫県

息子が地元の野球チームに入っています。平日の練習は、夜からのこともあり、大人の送り迎えが必須です。私はフルタイムで仕事をしているので、終業後に急いで帰り、夕飯を食べさせ、送り迎え、帰宅後はバッティング練習に付き合います。夫の勧めで始めた野球なのに、夫は帰りが遅かったりで、結局私がやっていることが多いです。チームでの練習は毎日ではないものの、自主練は絶対毎日。遅い時間から「素振りみて」と言われて、私は正直興味がないし、体力的にも精神的にも厳しいし、夫が協力してくれないストレスでメンタルが崩壊しそうです。

▼40代 福岡県

幼稚園生の娘がバレエ教室で発表会を控えているのですが、親としては楽しみ半分、不安半分で練習に励む娘を見守っていました。先生が厳しく、娘が真剣な顔で「ママ、私バレエ辞める」と宣言。娘の気持ちを優先したいのですが、もう発表会が迫っていて、発表会直前の先生のピリピリモードの間で、今更やめますといえないので、なんとか娘をフォロー。一度言い出すと絶対譲らない娘と、差し迫ってくる発表会。先生にも相談できず、精神的にも疲れます。

▼40代 神奈川県

息子が小学校1年生から地区の野球チームに入って以来、私達の週末は一変。毎週の練習や試合の送迎で朝早くからバタバタし、家族でのんびり過ごす休日はなくなりました。試合開始は朝8時。さらに、試合会場が遠方だと移動に時間を取られ、帰宅後は山積みの泥だらけの洗濯が待ち構えています。「これがあと何年続くのか…」と考えるだけで今後のメンタルをどう維持したらいいか悩んでいます。

(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)

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