工場敷地内で野良猫が繁殖→フォークリフトに轢かれ死亡も 十数匹を保護、茶トラ猫に里親みつかる

 とても人懐っこい茶トラ猫・フランくんは岡山県瀬戸内市の工場敷地内で保護されました。2024年春のことです。同市に拠点を置く『一般社団法人 せとうち保護犬猫の里』に野良猫がたくさんいるとの相談があり、ボランティアの西村朋美さんが見に行くと、そこには十数匹の野良猫がいました。

「現地に行ってみると、ごはんはもらえているけれど、工場内でフォークリフトやトラックに轢かれて次々と死んでいること、不妊手術をされていないため子猫が続々と生まれていること、死ぬ数も多いので爆発的な増加にはなっていないこと、多くの猫がひどい猫風邪やシラミの寄生などによって健康状態が悪いこと、中にはかわいがられていなくて誰かに遠くに捨てに行かれそうになった子もいたことなど、たくさんのことが分かりました」(西村さん)

 放ってはおけないため準備を進め、4月中旬に一斉捕獲を実施。瀬戸内市の助成金を利用して全頭に不妊去勢手術を行いました。術後は元いた場所に返す、いわゆるTNR(T=Trap/捕獲し、N=Neuter/不妊去勢手術を施し、R=Return/元の場所に戻す)を予定していましたが、例外的にフランくんだけがそのまま保護されることに。初対面の人にもゴロゴロと擦り寄っていく懐っこさが災いしたのか、誰かに虐待されたような痕跡が見られたからです。

「手術数日前に捕獲して自宅に連れて帰ると、足を引きずって歩く様子が見られました。工場の“えさやりさん”に尋ねたところ、『数日前にどこからか帰ってきたとき、尻尾にパンの袋の口を止めるプラスチック製のクリップがハメられていて、足を引きずるようになっていた。誰かに蹴られたりしたのかもしれない』と。猫の尻尾にクリップなんて人為的であることは明らかで、しかも足を引きずっているとなると、さらにひどい被害に遭う可能性もあるため、フランくんはリリースできる月齢でしたが、保護して家族を募集することになったんです」(西村さん)

 レントゲン検査の結果、骨盤骨折していることが判明したと言いますから、その時点で保護されていなければ、命も危なかったかもしれません。

■人懐っこさが武器に

 痛い思いをしたフランくんですが、“ずっとの家族”を見つけるにあたっては人懐っこさが武器となります。その魅力にハマったのは岡山市内に住む床田さん一家。息子さんが猫を飼いたいと言い、せとうち保護犬猫の里が運営する『せとうちドッグパーク』を訪ねたときは希望の茶トラ猫がいませんでしたが、後日、茶トラの子が来た!と連絡が。息子さんは一目でフランくんを気に入り、飼うことをためらっていたお母さんもそのかわいさにハートを射抜かれました。

 フランくんは床田家に来た初日から息子さんの膝の上に乗ったり、お腹を見せて気持ちよさそうに眠ったり。安心しきった様子を見せてくれているそうです。「すっかりフラン中心の生活になりました」と床田さん。もう怖い思いをすることはありません。

(まいどなニュース特約・岡部 充代)

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