「成人向けビデオ」と「イメージビデオ」の違いは何? キャッキャと海辺を走るだけじゃない…決してラクとは言えないお仕事【元セクシー女優が解説】
世の中にはさまざまなビデオ作品があり、お色気な作品がすべて成人向けビデオ作品というわけではありません。たとえば、セクシー女優が出演する成人向けビデオと、グラビアアイドルが出演するイメージビデオの違いは何でしょうか。後者はIVやイメビと略され、年齢制限のあるムフフなビデオマーケットでも販売されているため、どちらも同じものだと勘違いされがちです。
場合によってはセクシー女優もIVをリリースしますから、区別がつきづらいのは仕方がないことですが、詳しく掘り下げると異なる部分が多いです。
まず2つの大きな違いは、男性が出演するか・否かという点です。
IVの内容は様々なシチュエーション設定が作られている場合が多いです。出演者の女の子があなたの彼女やお嫁さんで、作品によって「今回は初デート」とか「新婚旅行」みたいに、世界観が決められているのです。
しかし、成人向けビデオとは違い、シチュエーションをイメージさせるためのものですから、出演者以外の人物を登場させてはなりません。
IVは視聴者そのものが恋人や旦那さんという“疑似ワールド”を楽しむものなので、映像はほぼ恋人視点で進みます。たまに俯瞰も含まれるものの、基本的に見ている人は「あなた」。女の子も視聴者と目が合うよう、目一杯カメラ目線で語りかけたり、画面に向かってキス顔をするのです。
成人向けビデオは思いっきり“絡む”相手がいますので、ここが大きな相違点でしょう。
また、過激な内容の作品が多いものの、IVはボカシ(モザイク)を用いないのも特徴です。
見えそうで見えないところを攻めて、ユーザーの想像力を掻き立てるようなアングルが満載に仕上げています。下手すると、成人向けビデオよりムフフさが突き抜けていることもあります(笑)。全部見せてしまうよりも、ちょっと勿体ぶっている方が興奮する……といったところでしょう。
絡む相手もおらず、女の子オンリーなイメージの世界。グラビアアイドルの単独出演だとスムーズに撮影が進みそうに思えますが、実はかなり大変です。
ボカシがないと修正のごまかしができないため、見せてはならない部分を徹底して隠さなくてはなりません。ちょっとのズレを見逃しただけで多くのシーンが「使えない映像」となってしまうため、激しく神経をすり減らしながら制作されます。
共演者がいないのも、ある意味大変な理由のひとつ。自分1人で気楽にやれるような映像メインの作品ならまだ良いですが、セリフが必須の作品だと完全なる一人芝居になります。未経験の人や、演技が苦手な人からすると「相手が誰もいない」のは、なかなかハードルが高いわけです。
さらに言ってしまうと、IVのギャラ自体はそんなに高くありません!
拘束日数や時間は人によりますが、多くの人は10万円前後で出演しています。地方や海外へロケに行けるレベルの売れっ子ならもっとお給料は上がりますが、そうでないと都会の家賃分くらいにしかならないので、労働力と給料はあまり見合わないかも……。
IVだけで生活するのはほぼ不可能といっても過言ではないでしょう。IVは知名度を上げるためのツールとして考え、別の活動も並行するのがアイドルたちの基本なのです。
キャッキャと海辺を走り、ポーズを決めているだけに思われがちなIVですが、決してラクとは言い難い仕事のひとつ。肉体労働であることに変わりはなく、おまけにギャラも高くないとなると、成人向けビデオとは異なった大変さがあります。
しかも、みんなで頑張って撮影をこなすにも関わらず、悲しいかなネットで無断転載をされがち。もし推しの女優やアイドルがIVを出したとしたら、ぜひお金を出して作品を買ってください。彼女たちも売り上げがモノを言う世界で生きているため、買ってくれたファンが1人でも多くいるだけで、演者は心が救われるモノですから!
◆たかなし亜妖(たかなし・あや)元セクシー女優のシナリオライター・フリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ゲーム会社のシナリオ担当をしながらライターとしての修業を積み、のちに独立。現在は企画系ライターとしてあらゆるメディアで活躍中。