「なるほど、~という気持ちがあるのですね」人間の相談にも乗ってくれるAI 実際に使ってみると…驚き!「専門家と話すのと変わらない」
テレビや新聞でも、AIに関するニュースがよく取り上げられるようになりました。特に「文章や画像を作り出せるAI」として知られる生成AIは、私たちの生活を変えていく新しい存在です。
とりわけビジネスの世界では生成AIの導入が進んでいます。実は日常生活においても、AIは活躍の場を広げているのです。旅行プランの提案、カロリーを抑えた献立づくり、そして仏教の教えにもとづく人生相談…AIは着実に活動範囲を拡大しており、市場も成長しています。
鉄腕アトムやドラえもんなどへの愛着から、「日本人はAIを受け入れやすい」と言われてきました。人手不足に悩む日本社会では、医療・介護現場や地域コミュニティなど、AI活用への期待は高まる一方です。私たちの暮らしの中でAIがどう活躍しているのか、具体的に見てみましょう。
■趣味や悩み相談もAIにおまかせ
さて、旅行は定番の趣味のひとつです。しかし時に、計画を立てるのが億劫に感じることもあります。そうしたときに、AIが旅行の相談に乗ってくれます。LINEで旅行したい時期や目的地を伝えるだけで、AIがおすすめの観光スポットやプランを送ってくれるのです。
ダイエットに励んでいる方は、食事メニューに悩む日もあるでしょう。そんなときにAIを活用して、1日1000kcalに収まる献立を提案してもらえます。(※ただし、健康面の不安や持病がある方は、専門家のアドバイスを受けながら利用してください)
日常の暮らしの中で悩みを抱えたときも、AIが相談に乗ってくれるようになってきました。たとえば千葉県柏市では「悩み相談AIチャットシステム」を導入しています。「専門家に話すほどの悩みかな…」と迷っても、AI相手なら24時間いつでも気軽に福祉の相談ができます。
さらには、仏教の聖人である親鸞と対話できるAIまで登場しています。私たちが問いかけると、仏教の観点からアドバイスしてくれるのです。
AIを通じたやりとりは、以前と比べるとかなり自然になってきました。AIに悩みを相談してみるとどんな返事が返ってくるのか、筆者も使っているAI(ChatGPT-o1)に尋ねてしてみました。
筆者から「新年を迎えて何か新しいことをしたいが何をすればよいか分からない」という悩みを打ち明けてみます。すると、AIは「まずあなたにとって大事なことは何ですか?」と尋ねてくれました。適当に返答するのではなく、必要な情報を聞き出した上で解決策を示そうとしたのです。
AIと実際にチャットをしてみると、専門家に相談するのと同じように、自分の考えが整理されていくのを感じます。少しずつ目標に向かう方法を提案してくれているので、はじめの一歩を踏み出し、おすすめされたプランを実行したくなりました。
以前と比べると、AIとの会話は洗練されてきた印象です。今後は、より人間のように自然な語り口で、さらに役に立つ会話ができるようになるでしょう。
筆者とAIが実際に交わした会話(チャット)を記事の最後に載せておきます。AIが進歩してきている様子が感じられますので、ぜひご覧ください。
■AIは日本でも世界でも広まっている
日本だけでなく世界中で、生成AIは驚くほどのスピードで広がっています。
日本国内では、ここ数年で利用者数が急増してきました。ICT総研の調査によれば、275万人(2020年末)から1924万人(2024年末)へ利用者が増えたと報告されています。3年後の2027年末には、需要はさらに2倍増加するとの予測です。
世界のAI市場も、急速に大きくなっています。情報通信白書(令和5年度)では、1.2兆円(2022年)から14.2兆円(2030年)へ、10倍以上に市場規模が膨らむ見込みと報告されました。AIサービスの広まりは一過性のブームではなく、社会全体が大きく変化しつつある最中と言えるでしょう。
鉄腕アトムやドラえもんの人気を踏まえ、日本ではロボットやAIに対して、親しみを抱く“文化的土壌”があると言われています。ほかの国と比べると、生成AIを受け入れるハードルは比較的低いという議論もあります。少子高齢化が進む日本では、AIが労働力や人手の不足を補う解決策としても、期待が寄せられているのです。
今後は、日常生活のよりさまざまな場面でAIが活用されていくでしょう。ビジネスの効率化だけではありません。人手が足りない医療・介護、地域コミュニティにおける支援など、多くの分野で利用が進んでいくはずです。
◆新居 理有(あらい・りある)龍谷大学経済学部准教授 1982年生まれ。京都大学にて博士(経済学)を修得。2011年から複数の大学に勤め、2023年から現職。主な専門分野はマクロ経済学や財政政策。大学教員として経済学の研究・教育に携わる一方で、ライターとして経済分野を中心に記事を執筆している。