ペルシャ猫100匹を超える多頭飼育崩壊→行政やボランティアらが連携し保護、譲渡会も予定
「ペルシャチンチラレスキュー混迷。昨日100匹を超える事が判明。長毛猫の多頭崩壊。現在たんぽぽの里に27匹。そして今日これから40匹捕獲予定。15匹は相模原市保健所は預かり予定。すでに相模原市獣医師会協力病院に13頭。保護しながらのレスキュー,初期医療。人手が足りません」
こんな投稿をされたのは、ちょこママさん。神奈川県相模原市の民家で猫が増えすぎて、飼い主が適切に飼育できなくなる「多頭飼育崩壊」が起きたことが分かりました。
これまで発覚している数は、猫100匹以上とのこと。昨年11月27日に同市保健所生活衛生課から動物愛護団体「たんぽぽの里」(同市、代表・石丸雅代さん)のところへレスキューの依頼が入りました。
まず相模原市動物愛護推進委員の山本和子さんが保健所職員と同行して飼い主の説得とともに3匹を引き取り、その後12月3日に保健所、同市獣医師会、愛護推進委員、たんぽぽの里で今後のレスキューに関して協議。6日より引き取りを始め、初回53匹を保護しました。
そして相模原市保健所生活衛生課と「たんぽぽの里」は、地元の麻布大学をはじめ同市獣医師会、ボランティアらに対し保護や医療面、一時預かりなどを協力要請。このほか、以前からたんぽぽの里の保護活動に協力をしていた「プリモ動物病院 星が丘」の院長から協力の申し出があり、今回のレスキューにも協力を依頼したとのこと。さらに飼い主が猫の所有権を放棄する方針で話し合いを進めながら、飼い主自身が1匹ずつ猫を捕まえ、同市の登録ボランティアと保健所職員らで収容し、レスキューを行ったといいます。
「一報が入り、当初その数約60匹ということで始まりました。後日聞いたところによると、飼い主からは20匹という申告でしたが、現地に行ったら見せてもらえる場所だけで46匹の目視確認をしたそうです。その翌週には相模原市保健所生活衛生課と同市獣医師会と同市のサポーターであるボランティアらを加えて対応について協議をしました。この時初めて、100匹を超えていると聞いて驚き、正直頭も体もまひしそうな状況でしたね…」(石丸さん)
■保護された猫の半分が低栄養状態、体は毛玉だらけ…治療やトリミングなど施す
膨大な数の猫たちを抱え込んでしまったという飼い主。去勢・不妊手術をしないまま猫を増やしてしまって、一度は知人に譲ったものの全頭戻されてしまって途方に暮れたことも。そこで以前住んでいた地域の保健福祉事務所に相談したこともありましたが、当時は取り合ってもらえなかったとか。そして昨年10月に相模原市へ転入し、多頭飼育崩壊が発覚。こうして相模原市や「たんぽぽの里」などが動くことになったのです。石丸さんは「初動さえしっかりしていればこの3分の2の頭数で済んだものが行政のずさんな対応で犠牲になった猫が増えたことはとても遺憾です」と振り返ります。
保護されたのは、11歳~6カ月ほどのチンチラ系ペルシャの長毛猫。初期医療として、血液検査やウイルス検査、のみとり、さらに不妊手術やマイククロチップの埋め込み、シャンプーとトリミングなどを行っているとのこと。また毛玉だらけの体をできるだけバリカンせずにきれいに取り除くなど譲渡を見据えてきれいに整えたそうです。
「血液検査をしてほぼ半分の猫に異常があり、低栄養状態でした。このほか、子宮蓄膿症で子宮が破裂寸前で緊急手術する猫や、目の疾患がある猫も多数いて。とにかく体調管理が必要な猫が多く、医療費もかかることから現在は一時預かりを停止し、相模原市中央区南橋本に緊急シェルターを作り、既存のシェルターでもチンチラのケアをボランティアとスタッフで対応しています。最終的に保護したのは112匹でした。1匹は飼い主に託し、111匹を引き取り初期医療は終わりましたが、今は治療の必要な猫に治療をしながら譲渡対応もしています」(石丸さん)
■相模原市内で譲渡会を開催予定
今後、保護された猫たちが参加する譲渡会は次の通り。
1月11日に「綿半ホームエイド相模湖店」(受付14時半、12時から15時まで)で、1月18、19日に「カインズホーム町田多摩境店」で譲渡会を、2月には相模原市が主催の譲渡会も行う予定です。(※綿半、カインズホームへのお問い合わせはご遠慮ください)
多頭飼育崩壊のレスキュー活動を続ける石丸さんからのメッセージです。
「私が住んでいる相模原市は政令指定都市で、本来愛護センターの設置が望ましいですが、ありません。今までは相模原市には動物が収容できるセンターがないため神奈川県動物愛護センターとは契約締結していましたが、収容頭数が多く、マンパワー不足や職員の疲弊などから猫たちの受け入れを拒否されている状況です。昨年相模原市内で80匹の多頭飼育崩壊が起きた時にも、猫たちの受け入れをしてもらえなかったので相模原市が一時収容施設(定員24匹)をつくりました。しかし、収容定員を越えた猫たちの預かり先が見つからず、多いときには60頭以上収容された時もあります。
秦野や海老名、南足柄、伊勢原、厚木など多頭飼育崩壊でほんの一握りの犬猫を入れるにも、ボランティア達が手弁当で初期医療行うと収容し、それ以外の動物の対応はボランティアだけで行うという状況です。昨年3月末にこの現状を神奈川県知事に陳情したところ、15年間保護された猫たちのために尽力してきた神奈川県の登録ボランティアを抹消されました。
また、『いのちの基金』(※)は神奈川県として活用していると思いますが、横須賀、横浜、川崎・相模原を始め準中核市はセンターに収容されない限り使用することができません。1回開催するのに200万円もかかる神奈川県愛護センターの譲渡会をしているのであれば、現場で苦しんでいる動物たちのために神奈川県の『いのちの基金』が使われるように切に願います」
※「いのちの基金」…保護された犬や猫たちのけがや病気の治療、人と暮らすためのしつけなどを行い、譲渡を推進していくための基金。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)