【おむすび】「目には見えない苦しみ」を佐野勇斗が見事に表現 翔也の“再生”をスタッフが振り返る
新年に入り、連続テレビ小説『おむすび』(NHKほか)の後半がスタートした。今週放送された第14週「結婚って何なん?」では、結(橋本環奈)と翔也(佐野勇斗)が米田家・四ツ木家の家族に胸を張って「結婚します」と言えるように、貯金をしながら、いち社会人として懸命に仕事に取り組む姿が描かれた。
1月10日放送の第70回で、結は自分が作った料理を食べた人たちが健康になって、その人たちの未来を支えることが嬉しいのだと語り、生涯栄養士を続けていくと家族の前で宣言した。あらためて家族から祝福をもらった結と翔也は、晴れて夫婦となる。
今週は、肩の故障で野球の道を閉ざされた翔也の仕事を通じた“再生”も描かれた。星河電器で開発中の炊飯器の社内モニター100人を集めて試食データをまとめるという仕事を達成した翔也は、「三振取ったり豪速球投げんのとも違うけど、誰かの役に立つってこんな嬉しいんだな」と、初めて仕事に喜びを見い出すのだった。
■翔也の「無意識下」の思いを表現するのが難しかった
第14週で描かれた翔也の再生について、演出を担当した原田氷詩さんと制作統括の真鍋斎さんに振り返ってもらった。原田さんは「今週の翔也の心の表現は佐野勇斗さんとも『難しいですね』と話しました」と語り、こう続ける。
「67回で、翔也と同じ苦しみを経験した沙智(山本舞香)が結に『簡単には前向かれへんと思う。焦らずに見守ってあげてな』と言うのですが、この言葉の通りなんですよね。本人は立ち直っているつもりでも、心の奥底ではまだ吹っ切れていない。翔也の『無意識下』の思いを表現するのが、佐野さんはとても難しかったのではないでしょうか」
「吹っ切って新しい自分になるために、結との結婚に向けて奔走する翔也を佐野さんがまっすぐなお芝居で表現してくださいました。結婚指輪を買うお金を貯めるために神戸から大阪まで走って帰ったりと、ある種過剰ともいえる行動がまた翔也らしいんですよね。総務部の仕事に自信が持てて、少しずつ少しずつ立ち直っていく翔也の姿を大事に撮りました。僕としては、70回で翔也が『今まで思いっきり野球やらせてくれて、ありがとう』と両親に向かって言うシーンに終着点を持っていきたかったんです。あそこで翔也は、初めて本当に乗り越えることができたのではないかと思います」
■言葉にできない翔也の思いを結に「反射」させた
また、真鍋さんは「翔也自身の心の中というのは、言葉にはできないものなんですよね。だから68回の、大阪まで走っていく翔也の後ろ姿を見送るシーンで、結に翔也の思いを反射させる表現になっていました。結が、沙智から言われた『焦らずに見守ってあげてな』という言葉を思い出しながら翔也のこれまでを反芻することで、彼の思いを立ち上がらせていましたね」と振り返る。
次週第15週「これがうちの生きる道」では、自身に起こったある大きな出来事から、結が管理栄養士を目指すことを決意する。結と翔也の新しい未来を見守りたい。
(まいどなニュース特約・佐野 華英)