雷や大雨が苦手 物音にたびにガクガクブルブル 怖がり克服に頑張る元繁殖犬チワワがつかんだ幸せ
小さな体に大きなお目目、きれいなツートンカラーの体。一瞬「生まれたばかりの子牛?」と勘違いしてしまいそうですが、れっきとしたワンコのくるみちゃんです。
繫殖犬だったチワワで、長くケージの中に閉じ込められた生活を送っており、外の世界はおろか人間の愛情も知らぬままでした。
■「おやつ=食べ物」という認識がなかった
くるみちゃんの存在を知り、保護したのは静岡県の保護団体・スリール。同団体に登録する預かりボランティアさんの家で世話を受けながら、「ずっとの家族」との出会いを目指すことにしましたが、くるみちゃんにとっては何もかもが初体験。
とにかく怖がりで、物音がする度にガクブルで固まります。雷や大雨が苦手で、とても繊細な性格の持ち主であることがわかりました。
やがて「自由に歩いて良いんだ」「好きな場所に行って良いんだ」と自覚すると、くるみちゃんは預かりボランティアさんの後をついて行くようになり、自分のくつろぎ場所をみんなが集まるダイニングテーブルの隣に決めたり、少しずつ距離を縮めてもくれました。
ただし、これはあくまでもくるみちゃんが自分で「したい」と思った行動に過ぎず、預かりボランティアさんの家族が「くーちゃん(くるみちゃん)」と呼ぶと、慌てて逃げて行ってしまうこともありました。
また、おやつをあげても無反応。遠慮したり警戒しての無反応ということではなく「おやつ=食べ物」ということを全く知らなかったのです。過去の劣悪な環境を想像し、胸が苦しくなりますが、それでも日に日に笑顔を浮かべてくれるようにもなり、その小さな足で一歩ずつ「ワンコ本来の幸せな生活」に向けて歩き始めてくれました。
■歯の治療と避妊手術を実施
元繁殖犬の多くがそうであるように、くるみちゃんもまた十分な健康面でのケアを受けていたわけではありませんでした。いくつかの歯が悪く、健康な歯も歯石だらけ。これらの悪い歯を抜き、歯石除去などを行いましたが、不思議とこのときはガクブルの様子を見せませんでした。
おそらくは動物病院の優しいスタッフの方々に信頼を寄せ、「この人たちは私に良いことをしようとしてくれているんだ」と悟ったからのようにも映りました。
避妊手術も実施。万全を尽くしてくるみちゃんの「ずっとの家族」との出会いを待ち続けました。
■里親さんの家で心を開き、娘さんの看病をするまでに成長
保護から数カ月。散歩に慣れ、預かりボランティアさんにもすっかり心を開いたくるみちゃんの元についに「うちにおいで」の声がかかりました。小さな娘さんがいる優しい家族でした。
ここで心配だったのはくるみちゃんがまたガクブルのビビリ犬に戻ってしまうのではないかということ。預かりボランティアさんは里親希望の家族にその点を念入りに説明した上で、まずはトライアルとして迎えてもらうことにしました。案の定、くるみちゃんはこの家に招かれるとガクブル発動。あれだけ好きだった散歩でもガチガチに固まり動かなくなることもありました。
しかし、里親希望の家族は全く動じず、「くるみちゃんのペース」を最優先に優しく接し続けました。特にくるみちゃんの心を開いたのが、娘さんが散歩後の足をいつもきれいに拭いてあげたこと。こんなコミュニケーションの繰り返しで、くるみちゃんは程なくして心を開くようになり、娘さんが熱を出して寝込んだ際には、近くに寄り添ってあげるように。
その様子を見ると、くるみちゃんは元々この家族と赤い糸が結ばれていたかのようで、もちろん正式譲渡。見事、幸せな第二の犬生をつかむことができました。今日も娘さんと一緒の楽しい毎日を過ごしているというくるみちゃん。これからもっともっとたくさんの喜びや幸せを味わうことでしょう。
(まいどなニュース特約・松田 義人)
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