白鵬、全勝守るも変化に鏡山審判部長激怒
「大相撲名古屋場所14日目」(21日、愛知県体育館)
横綱白鵬と大関日馬富士が14戦全勝とした。白鵬は大関稀勢の里と3度目の立ち合いで、左に変化してはたき込み。日馬富士も大関琴欧洲に立ち合いで左へ変わりながら押し出した。千秋楽全勝決戦は、横綱隆の里と横綱千代の富士が対戦した83年秋場所以来29年ぶりで、横綱と大関の対戦は史上初となる。白鵬が勝てば春場所以来で、貴乃花(元横綱)を抜く23度目の優勝。全勝Vは10年秋場所以来で、大鵬(元横綱)を抜いて史上最多の9度目となる。日馬富士が勝てば、昨年の名古屋以来3度目で、初の全勝優勝となる。
横綱の品格を汚す一番になってしまった。3度目の立ち合いで、白鵬は左へ飛んで稀勢の里をはたき込んだ。「あれだけ突っ込んできたから、よく見て行こうと思って」。とっさの判断を強調するが、2度も相手に突っかけられて、冷静さを欠いていた。
全勝対決への雰囲気を白けさせた横綱に、鏡山審判部長(元関脇多賀竜)は激怒した。「受けて立たなきゃ。悲しいね。協会の看板があれじゃあ、どうしうようもない」。無敗を守っても、取り口が評価されることはなかった。
北の湖理事長(元横綱北の湖)も落胆した。「力を見せつけて欲しかった。稀勢の里は手をついて制止した。白鵬の方が緊張していた」。全勝対決の見通しも「受けて立てば力強さをアピールできたが、これで五分と五分」と修正した。
2場所ぶりの優勝を目前にして、白鵬は汚名返上の課題を抱え込んだ。師匠の宮城野親方(元幕内竹葉山)は「最近の横綱は『心を強く鍛えないと』と言っている」と明かす。綱の重みと責任が、孤独な一人横綱の心技体にひずみを生じさせているようだ。