綱とり日馬富士に横審から変化禁止令
「大相撲秋場所5日目」(13日、両国国技館)
綱とりに挑む大関日馬富士に、横綱審議委員会(横審)から物言いがついた。国技館で観戦した鶴田卓彦委員長(85)=元日本経済新聞会長=が、初日から5連勝ながら、立ち合いで左に回り込んでから小結栃ノ心を寄り切った相撲内容に苦言を呈した。上位陣では横綱白鵬、大関稀勢の里が5連勝。他の大関では鶴竜が4勝目。一方で琴欧洲は豊ノ島のすくい投げに屈して3敗目を喫し右肩を負傷、6日目から休場する可能性が出てきた。
あっさりと栃ノ心を退けた。立ち合いで当たると、日馬富士はすぐに左に回った。左前まわしをつかみ、出し投げの形で土俵際に追い込んでから寄り切った。余力十分の完勝に「体がよく動いているのかもしれない。相手が見えている」と手応えを口にした。
しかし“物言い”がついた。横綱推薦の役割を担う横審の鶴田委員長が観戦後に「優勝は厳しい。相撲はうまいが、力がもうひとつ」と厳しい評価。「あれ以上横に動いたらダメ。勝つだけじゃ上に立てない。受け止めて勝たないと」と述べた。
日馬富士は4日目の魁聖戦でも左に回っての上手出し投げで白星。3日目には松鳳山に荒々しい張り手を食らわせている。それだけに鶴田委員長は「5日目までは合格圏ギリギリの内容。60点」と付け加えた。「優勝ないし13勝以上の準優勝」としていた昇格基準は変えないという。
横審内でも意見は割れた。ともに観戦した同委員の山田洋次氏(映画監督)は「スピードが群を抜いている。横綱になってほしい」と高評価。沢村田之助氏(歌舞伎役者)は把瑠都、琴奨菊が休場し、この日右肩を負傷した琴欧洲も休場の可能性が浮上したことに「14、15勝してもらわないと。大関3人が休むなら優勝が絶対条件」と話した。
過去2度の綱とり場所は、5日目の時点で09年名古屋場所は2敗、昨年秋場所は3敗と綱とりが“終戦”。課題を克服した5連勝だが、相次ぐ大関の休場や横審の苦言など、先が読めなくなってきた。日馬富士は「一日一番。一生懸命やるだけ。あとから結果はついてくる」と、一層気を引き締めていた。