日馬富士、隠岐の海下し“マジック2”
「大相撲秋場所11日目」(19日、両国国技館)
綱とりに挑む大関日馬富士が、隠岐の海を上手投げで下した。土俵際まで追い込まれ、捨て身の投げ技で逆転。唯一初日から11連勝とし、横綱昇進の目安とされる13勝に“マジック2”とした。
物言いの行方を待つ土俵下。朝日山審判長(元大関大受)から行司軍配通りに自身の白星がアナウンスされると、右手で小さくガッツポーズ。「大きいですね。ほっとしました」。賜杯争いトップを守り、横綱昇進へも大前進する11連勝だ。
辛勝だった。出し投げで攻めるも、こらえた隠岐の海に胸を合わされ、かけ投げも不発で土俵際に追い込まれた。それでも右手で相手の頭を押さえながら左上手投げ。「取り直しかと思った。次の相撲のイメージばかり考えていた」。ほぼ同体で土俵の外で落ちたが、わずかに残っていた。
東の支度部屋。白鵬より遅くまで風呂場で体を洗った日馬富士は、先に身支度を終えて引き揚げる白鵬から笑顔交じりにモンゴル語のような言葉をかけられると、笑顔を見せた。報道陣への受け答えでも、今場所初めて笑顔を満開にした。それだけ大きな1勝だった。
この日、「兄貴」と慕う元横綱朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏が来日。関係者によると14日目に観戦予定という。場所前にはモンゴルで会食し「信じている」と激励された。初日から連日のメールで「余計なことを考えるな」などと助言を受けている。
師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は「まだ気が早い」としながらも「うちの一門は不知火型だから。オレがちゃんと教えてやるよ」と言及。化粧まわしも自身の現役時代のものを使用する予定で、近い将来の横綱土俵入りを見据えた。
場所前に横綱審議委員会が設定した「優勝を争っての13勝以上」へ“マジック2”。3場所を経た連勝は27に伸びた。難敵の大関稀勢の里も2敗目を喫して脱落。朝青龍の来日と白鵬の笑顔。昇進ムードが急速に高まってきた。
史上最長、30場所も横綱が誕生しなかった期間が終わろうとしている。モンゴルから来日して丸12年。「場所が終わった時の結果がすべてだから」と話して国技館から引き揚げた。そこに慢心はなかった。