日馬13連勝も綱“待った”横審が慎重論
「大相撲秋場所13日目」(21日、両国国技館)
無傷の13連勝とした日馬富士の“横綱当確”に、待ったがかかった。場所前に「優勝を争っての13勝以上」を昇進ラインに掲げていた周囲から、慎重論が続出した。
横綱審議委員会の鶴田卓彦委員長(元日本経済新聞社会長)は「大きな壁を乗り越えたが決定とは言えない。議論にはなるが、連敗して優勝を逃せば結論は分からない」と述べ、鏡山審判部長(元関脇多賀竜)は「最低ラインは越えたが、文句なしで決めてほしい」と注文。北の湖理事長は「優勝は前提。だが、この一番は大きい。13勝は目安にしている」と、微妙な言い回しだった。
もっとも、立派な13連勝なのは間違いない。ライバルと意識する稀勢の里に、立ち合いで頭から当たり、土俵際まで押されるも、もろ差しから反撃して寄り切った。擦りむいた右のこめかみには血がにじんでいた。8027人の歓声が響き渡る好勝負だった。
日馬富士は充実感たっぷりに「楽しみにしていた相手。お客さんも期待していた、いい相撲を取ろうと思った。立ち合いで自分の相撲を曲げたくなかった」と力強かった。横綱のように、ファンに心を配った。
北の湖理事長は「今日のようなこん身の相撲なら、崩れるとは思えない」と予想し、鏡山審判部長も「14勝なら文句はない」と見解を述べた。平成以降に誕生した横綱は、すべて連続優勝で昇進している。14日目にも決まる優勝。昇進へ今度こそ“王手”だ。
横綱は見えたか、と問われても「一番一番、全身全霊で頑張るだけ」と答えた日馬富士。油断はない。14日目の相手はモンゴルの同郷、大関鶴竜。新横綱誕生が近づいてきた。