日馬富士 14連勝で横綱昇進“当確”
「大相撲秋場所14日目」(22日、両国国技館)
日馬富士が横綱昇進を“当確”させた。鶴竜との大関対決を寄り切りで制し、初日から14連勝とした。北の湖理事長(59)=元横綱=は慎重な姿勢を貫いたが、審判部と横綱審議委員会(横審)は横綱昇進へ前向きだった。2場所連続4度目の優勝を目指す日馬富士が全勝で飾れば、貴乃花以来2人目の連続全勝優勝での横綱昇進となる。
ついにこの日がやってきた。第69代横綱白鵬が誕生してから5年。第70代横綱に、同じモンゴル出身の日馬富士が“当確”した。やはりモンゴル出身の鶴竜に対し、持ち味の鋭い立ち合いからもろ差しに。一気に前に出て寄り切った。
無傷の14連勝。朝日山審判長(元大関大受)は「ケチのつけようがない」と述べた。千秋楽に鏡山審判部長(元関脇多賀竜)と、昇進を話し合う臨時理事会の招集を北の湖理事長に要請することを明言した。
横審の鶴田卓彦委員長(元日本経済新聞社会長)も「14勝というのはかなりレベルの高い数字。ほかの委員もそんなに意見は違わないだろう」と前向き。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は「先場所全勝優勝してるから考慮されるだろう」と、優勝を逃しても吉報が届く見通しを述べた。
圧倒的な実力を見せた日馬富士。昇進のことを問われても「明日の相撲だけに集中したい。余計なことは考えずベストを尽くしたい」と、硬い表情のまま。感情を押し殺して、千秋楽の白鵬戦だけを見据えた。
12年前。伊勢ケ浜親方が、100人以上が参加したモンゴルでのテストで見つけた原石は、身長175センチ、体重80キロの少年だった。身体能力の高さに加え、日馬富士の父ダワーニャムさんの存在が入門の決め手になった。
全部で6人いた候補生。保護者との面談で「日本でいじめられるのでは」と息子のことを心配する声が占める中、ダワーニャムさんは「うちの子はどんなに厳しい稽古をしても逃げない。頑張ります」と訴えた。師匠は「ちゃんとした父親だった」と振り返った。
ダワーニャムさんは06年、交通事故で50歳の若さでこの世を去った。今場所前、モンゴルに帰国した日馬富士は、墓前で綱とりを約束している。千秋楽には「兄貴」と慕い、来日中の元横綱朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏も応援に来場する予定だ。父や家族、そして“兄貴”のために、全勝優勝を届けてみせる。