日馬富士、兄貴分の助言効いた白星発進
「大相撲九州場所初日」(11日、福岡国際センター)
新横綱日馬富士は小結豊真将を寄り切り、横綱初陣を白星で飾った。前日に兄貴分と慕う元横綱朝青龍の助言通り、スピードを生かす本来の取り口を発揮。夏場所からの連勝は32に伸び、北の湖理事長(元横綱)に並んだ。先輩横綱の白鵬は小結安美錦を寄り切った。かど番大関3人は、琴欧洲と琴奨菊が黒星発進、把瑠都は苦戦を制した。他の大関陣では稀勢の里は白星も鶴竜は敗れた。
第70代横綱の初陣。硬さはなかった。日馬富士は仕切り線より随分後方から立った豊真将を受け止めると、焦って攻める相手の頭を左手で下げ、右を深く差してそのまま難なく寄り切った。
「毎場所初日は緊張やワクワクした気持ちになる。それを味わいながら自分の相撲に集中して、やるべきことをやった」と上機嫌。北の湖理事長(元横綱)が「緊張したはずだが、相撲内容に緊張はなかった」と驚く完勝劇だった。
兄貴分の助言が効いた。前夜、尊敬する元横綱朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏から電話で「不安だろ。でもこれまでの(横綱)69代も皆一緒だった。余計なことを考えず頑張ってこい」と激励された。
昇進直後は「雲の上にいるみたい」と感激していたが、すぐに現実に直面。横綱としての仕事量が多く稽古時間確保に苦心し、両足首に痛みも発生。周囲の期待感に不安を覚えた。それが、この日の朝稽古後には、報道陣を呼び寄せ「自分は偉くない。横綱の地位がすごいんだ」と持論を展開して談笑するほど、リラックスできていた。
土俵入りこそ、せり上がった後に四股を踏む際、ヒザの上に下ろした右手が汗でずれる“小ハプニング”があったが、取組では持ち味のスピードを全開させた。
これで32連勝。北の湖、羽黒山の記録に並び「光栄です」と日馬富士。「一日一番集中してやるだけ」。普段通りの言葉で意気込んだ。自然体で横綱の重責を乗り越える。