日馬、横綱初V王手! 張られても冷静

 「大相撲初場所13日目」(25日、両国国技館)

 横綱日馬富士が大関稀勢の里を送り出して13連勝とし、横綱初優勝に王手をかけた。14日目に勝つか、2敗で追う横綱白鵬と平幕高安が敗れれば、昇進2場所目にして、2場所ぶり5度目の優勝が決まる。白鵬は大関鶴竜を押し出し、高安は関脇把瑠都を寄り切った。大関返り咲きに10勝が必要だった把瑠都は6敗目を喫し、来場所の大関復帰がなくなった。大関琴欧洲は栃ノ心を上手投げで下して勝ち越し、大関琴奨菊は小結栃煌山に敗れ7敗目を喫した。

 V確率百パーセントだ。日馬富士が横綱としての初優勝に王手をかけた。稀勢の里に立ち合いで張られて左を差された。押し込まれたものの、素早くさばいて離れると、後ろを向いた背中を軽く押した。2差を維持。13日目を終えて2差を逆転された例は過去にない。

 横綱相手の張り手はタブーとされている。「張ってくるとは思わなかった。久しぶりに顔を張られたな。チェッ。とっさに体が動いた。相撲が早く終わっちゃったね」。舌打ちしながらも、貫禄たっぷりに振り返った。

 大関時代にライバル視してきた相手。この日は朝稽古で15番、立ち合いの確認をした。中日以降は体をほぐす程度だった内容を強化して、決戦に臨んだ。

 汚名返上の時が来た。9勝6敗に終わり、新横綱として歴史的不振に陥った昨年九州場所。横綱審議委員会から厳しく批判された。翌場所で巻き返したが「横綱は勝って当たり前だから」と、浮かれた様子はない。

 昨年九州場所後、横綱昇進後初めてモンゴルに帰郷した。06年末に交通事故で亡くなった、尊敬する父ダワーニャムさんの墓前に向かった。「一人の人間として胸を張って報告できることは幸せ。感謝の気持ちが湧いた。その気持ちが自分の力になる」。迷いは消えていた。

 歓喜の瞬間は近い。それでも「一日一番」と、油断を消すように、お決まりのフレーズを繰り返した。

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