王さん“盟友”大鵬さんへ惜別の言葉
19日に心室頻拍(しんしつひんぱく)のため死去した大相撲の元横綱大鵬の納谷幸喜さん(享年72)の通夜が30日、東京・青山葬儀所で営まれた。日本相撲協会の北の湖理事長(59)=元横綱、横綱日馬富士(28)、元横綱朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏(32)ら1000人が参列。ソフトバンク・王貞治会長(72)がお別れの言葉を読み上げた。戒名は「大道院殿忍受錬成日鵬大居士(だいどういんでんにんじゅれんじょうにちほうだいこじ)」。葬儀・告別式は31日、同所で午前10時から行われる。
王会長は納谷さんの遺影から一時も目を離さず、苦労をねぎらうように話しかけた。
巨人・大鵬・卵焼き‐。60年代の高度成長期、ともに日本を活気づけた盟友を前に「常にあなたの後を追いかけて、あなたを目標にして戦っていた」と吐露した。初めて会った60年から続く親交。一本足打法を初めて披露した62年の前年の秋場所後に、納谷さんは第48代横綱に昇進した。
868の本塁打を放ち、初の国民栄誉賞を受賞した。歴代最多32回の優勝を誇る大横綱、ゴルフ界の“帝王”ジャック・ニクラウス、同じ40年生まれの2人を挙げて「大鵬・ニクラウス・王貞治」と心中で唱えて、野球道を歩んだと明かした。
現役時代、自宅で行われた新年会でともに飲み明かしたのが思い出という。納谷さんが36歳の時に脳こうそくに倒れたことを「天というのは無情ですね。あれだけ日本中を沸かせて、夢と希望と勇気を与えてくれたあなたが、なぜあんな病を得なきゃいけなかったのか。それが一番今でも悔しいことです」と口にした。
参列を終えた王会長は「本来の自分になって話ができた人でした」と振り返り、時代を担った盟友へ、思いをはせた。
納谷さんの戒名は、好んで用いた「忍」と「錬成」を入れた「大道院殿忍受錬成日鵬大居士」。62歳時に取材で撮影された遺影の両脇には現役時代の映像が流れ、賜杯を抱いた写真、横綱に就く以前の写真、没後に授かった正四位、旭日重光章が配され、祭壇は白い菊と胡蝶蘭で彩られた。
ひつぎには喪主の芳子夫人お手製のケースに入れられた愛用のくし、せった、9人の孫からの手紙、白地に紺で大鵬の刺しゅうが入ったハンカチ、福祉活動の際に配られた「夢」の文字入りバスタオルが納められた。