白鵬“角界の父”大鵬さんに精進誓う
1月19日に心室頻拍(しんしつひんぱく)のため死去した、大相撲の歴代最多32回の優勝を誇る元横綱大鵬、納谷幸喜さん(享年72)の葬儀・告別式が31日、東京・青山葬儀所で営まれ、1500人が参列した。横綱白鵬(27)=宮城野=は弔辞で一層の精進を誓い、棺を乗せた車が国技館を訪れた際は、300人のファンから「大鵬!」「ありがとう!」と叫び声が上がった。また、政府は納谷さんに国民栄誉賞を授与する検討を開始した。
「『しっかりやれよ』。その言葉を胸に、横綱として精進してまいります」‐。“角界の父”と敬愛し続けた元横綱大鵬、納谷さんの遺影を前に、白鵬が胸中を吐露した。優勝32回で日本を熱狂させた大横綱。そのしこ名を一字拝借して「白鵬」は誕生。書籍、映像で相撲を学び、「いつしか親方のような横綱になりたい」とあこがれた。
最後の対面は他界の2日前、初場所5日目の場所入り前だった。「場所中は外出を控えていますが、自宅に伺ったのは親方の導きがあったからだと思います」。その際に贈られた言葉が「しっかりやれよ」だった。
横綱に昇進した時だった。喜ぶ白鵬は納谷さんから「横綱は勝って当たり前。勝てなくなったら引退しかないんだ。私は横綱になった時、引退を考えた」と教えられた。白鵬は「身が引き締まった」と受け止め、優勝23回の大横綱に成長した。
出棺の際は、白鵬が先頭に立って棺を車に運び込んだ。納谷さんが30回目の優勝を決めた69年夏場所千秋楽の柏戸戦の実況が流される中、泣き出しそうな顔で“父”を見送った。
棺を乗せた車が国技館を訪れると北の湖理事長(元横綱)らが出迎え、約300人のファンから「大鵬!」「ありがとう!」と叫び声が上がった。車は入門した二所ノ関部屋、引退後に興した大鵬部屋の流れをくむ大嶽部屋を巡り、斎場で荼毘(だび)に付された。
喪主の芳子夫人は葬儀のあいさつで、36歳で脳梗塞に倒れても屈しなかった夫へ「最後まで横綱として立派に戦い抜きました。お父さんお疲れさま。ありがとう。天国から力士や孫たちに時々気合を入れてあげてください」と呼びかけた。
しっかりやれよ‐それは白鵬だけでなく、角界すべてに向けられたゲキに違いない。