故郷・福島へ 新入幕の双大竜が初白星

 「大相撲春場所5日目」(14日、ボディメーカーコロシアム)

 福島県出身としては13年ぶりとなる新入幕を果たした前頭15枚目の双大竜が、栃乃若をはたき込んで初日を出した。東日本大震災の被害が大きかった3県(岩手、宮城、福島)出身者では唯一の幕内力士が、故郷に元気星を届けた。横綱白鵬は、小結栃煌山をとったりで退け5連勝、単独トップを守った。2日連続で金星を配給していた横綱日馬富士は、妙義龍を送り倒し3勝目。大関陣は鶴竜が4勝目、琴奨菊、稀勢の里が3勝目を挙げたが、琴欧洲は4連敗を喫した。

 双大竜にようやく笑顔が戻った。5日目にして手にした幕内初白星。「いろいろ考えてしまって、寝付けない日もありました。状況が状況だったので、1勝はうれしいですね」と、喜びをかみしめた。

 栃乃若に低く当たり、突き押しで相手の上体を起こしてはたき込んだ。「押し切ることはできなかったけど、動きを止めなかったのが良かった」と振り返った。

 東日本大震災後、福島第1原発事故の影響で、飯舘村在住の伯父らは転居。農業を営む親族は、放射能の風評被害に悩まされた。自身が生まれ育った地で、多くの人々が苦しんでいるという現実。帰省するたびに、震災の爪痕を目の当たりにしてきた。2月20日には、東京・秋葉原駅前で行われたJA全農福島主催のイベントに参加して福島産農作物の安全性を訴えた。故郷への思いは強い。

 30歳にして新入幕を果たした苦労人。精神的に弱く、本番で実力を発揮できない悩みがあった。だが、震災を機に克服しつつある。「まだ10日あるんで、もっと喜んでもらえるようにできれば。この一番で変わってほしい」。一生懸命な相撲が信条の双大竜。福島にさらなる元気を届けたい。

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