稀勢の里、平幕に2敗…綱とり絶望的
「大相撲名古屋場所5日目」(11日、愛知県体育館)
綱とりがかかる大関稀勢の里は、平幕の千代大龍に送り出され、痛恨の2敗目を喫した。13勝以上の優勝を昇進条件にした北の湖理事長(60)=元横綱=も後ろ向きな見解を示し、今場所での綱とりは極めて厳しい状況に追い込まれた。両横綱は安泰で、白鵬は無敗を守り、日馬富士は4勝目。全勝は白鵬、琴奨菊と琴欧洲の2大関、平幕の魁聖の4人となった。
取組を終えて支度部屋に引き揚げると、稀勢の里は舌打ちにため息を繰り返し、顔を右手で覆ってうめき声を出した。5日目で2敗を喫した意味を重く受け止めていた。
一方的に攻められた。立ち合いで千代大龍に当たり負け。突かれて前に出たところを左に開かれると、体勢を崩して送り出された。「まだ終わってないですけどね。切り替えていくだけです。一日一日ですから」と続けたところで、「もういいですか」と自ら取材対応を打ち切った。
先月29日に旧二子山部屋の連合稽古で肌を合わせた千代大龍には、「稽古では右前まわしを取られて何もできなかった。はじこうと思った」と対策を講じられて敗れた。3日目に敗れた栃煌山とも場所前に出稽古で顔を合わせた。積極的な稽古が裏目に出た格好だ。
北の湖理事長(元横綱)は「何とも言える状況ではない。平幕に2敗だから。内容もよくない。上位相手に自分の相撲を取るのは大変」と綱とりに否定的。白鵬は「これで終わりではない。わたしも3回目の綱とりでやっとつかんだから」と早くもねぎらった。
1場所15日制が定着した1949年5月場所以降に誕生した横綱は、第41代千代の山から第70代日馬富士まで30人。5日目までに2敗を喫して昇進したのは、第46代朝潮のみ。59年春場所で5日目に2敗を喫した後、10連勝で13勝2敗。優勝を逃したが昇進した。
稀勢の里は13勝以上の優勝が条件だけに、今場所で昇進を決めるには、実質的な前例がない。それでも、数字上の可能性は残されている。まだあきらめるわけにはいかないはずだ。