稀勢の里、綱とりへ“心機移転”始動
「大相撲初場所」(14年1月12日初日、両国国技館)
オレはこの土俵から綱をつかんでみせる‐。大相撲初場所で2度目の綱とりに挑む大関稀勢の里(27)=田子ノ浦=が27日、移転先となった東京都墨田区の旧三保ケ関部屋で初めて朝稽古を行った。師匠の田子ノ浦親方(37)=元幕内隆の鶴=の名跡変更に伴い、前日の26日に引っ越したばかりだったが、その影響を感じさせない力強い動きを見せた。
いつもと変わらない光景が、そこにはあった。上がり座敷からは田子ノ浦親方が目を光らせ、稽古場には稀勢の里をはじめ、若の里、隆の山、高安と関取衆がズラリ。慌ただしかった移転を物語るように看板もない状態からスタートした新生・田子ノ浦部屋。だが、新たな歴史を刻むために確かな一歩を踏み出した。
午前9時39分、稀勢の里が土俵に入ると、ピーンと張り詰めた空気が稽古場に広がった。高安との(同じ相手と続けて取る)三番稽古だ。途中までは右四つを許して不覚を取ることもあったが、エンジンがかかりだした中盤以降は、鋭い立ち合いの踏み込みで圧倒、相手を一気に土俵外に運ぶ力強い取り口が目立った。
26番取って21勝5敗。「いい稽古場ですし歴史を感じますね。土俵の感覚も良かったし申し分ないと思います」と、稽古を終えると満足そうな表情。横綱北の湖、大関増位山、北天佑ら多くの名力士が汗を流した土俵の重みを存分に味わった。
すぐに稽古を再開できたことに田子ノ浦親方もホッとした様子。「稽古をできる環境をつくるのは当たり前のことだが、土俵も全く手をつけずに使えたのはありがたい。力士たちも一生懸命やっていた」と語った。
松戸からの荷物は運び終えたものの、2階の大部屋は片付けが済んでおらず、稀勢の里も当面は近隣のホテルなどに滞在することになる。とはいえ、相撲に集中できる状況になったことで、綱とり場所へ万全の状態で臨めそうだ。