綱とり稀勢の里ゴロリ…黒星発進
「大相撲初場所・初日」(12日、両国国技館)
大関稀勢の里は東前頭筆頭の豊ノ島にすくい投げで敗れ、2度目の綱とりは苦しいスタートとなった。幕内通算は706勝で元横綱武蔵丸(現武蔵川親方)と並んで史上5位となった。
館内に落胆のため息が充満した。稀勢の里があっさり負けた。立ち合いは狙い通りに右上手を取ったが、すぐに離してしまう。相手が得意のもろ差しを許すと落ち着きを失い、強引にきめ出しにいってすくい投げを食らった。それは綱を狙う男の相撲ではなかった。
支度部屋に戻ると、無言で黙々とテーピングを外した。落ち着きを取り戻そうとするかのように、ペットボトルの冷水を何度も口に運んだ。しばらくして「初日独特の雰囲気があったか」と聞かれ「弱さが出ましたね。右を取ったが、よくはなかった。切り替えていくだけ」と苦しそうに言葉を絞り出した。
初めて綱とりに挑戦した昨年名古屋場所は、前半戦で3敗を喫して失敗に終わった。同じテツは踏まないと臨んだ今回は、くせ者豊ノ島との対戦を予想し、場所前の出稽古で小兵の豪風、松鳳山を相手に対策を練った。この日の朝稽古では「昨夜は普通に寝られた。準備はできている」と平常心を強調したが、前回同様序盤戦の魔物に魅入られた格好だ。
伊勢ケ浜審判部長(元横綱旭富士)は「横綱を目指す人が初日から負けるとは。綱が絶望とまでは言わないが、下の番付の者にひっくり返されて格好悪い」と厳しい評価。2度目の綱とりもイバラの道となった。