遠藤、流血惜敗「勝てないと意味ない」

 「大相撲春場所初日」(9日、ボディメーカーコロシアム)

 荒れる春場所がホープの流血黒星で幕を開けた。東前頭筆頭の遠藤(23)=追手風=は、綱とりを狙う大関鶴竜に挑戦。左ほおと左目の上から流血するほど熱の入った相撲で追い詰めたが、あと一歩のところではたき込まれた。2日目は全休明けで小結豊ノ島に首投げで辛勝した日馬富士戦で、初めて横綱の胸を借りる。横綱白鵬は小結松鳳山を押し出し、かど番の大関稀勢の里は隠岐の海を上手投げで退けた。

 大入り満員の歓声が悲鳴に変わった。立ち合いの直後、遠藤の左顔面が見る見る鮮血に染まる。何としても勝つ‐。強い意志を表に出すと、瞬時に右に動いて突きを繰り出した。1発、2発。鶴竜を土俵際へ追い込み、あと一歩で殊勲星‐。その瞬間、落とし穴が待っていた。

 とどめを刺そうと出した両手。だが、気ばかり焦ったのか、足がついていかない。抜群のセンスを持つホープらしからぬ攻め。これを大関が見逃すはずもない。軽々と右へ回られ、タイミングのいいはたきをまともに食らった。勝ったと思った瞬間、その手から白星が逃げた。

 支度部屋に戻ると「くそー。勝てないと意味がない」と、悔しさを爆発させた。日大カラーのピンクのタオルで、負傷した左ほおと左目上の傷から流れる血をぬぐった。その間も無念の思いが頭の中を巡っていたのか、「勝てるとは考えなかった。無我夢中でしたから。やっぱり甘くない」と、言葉を絞り出した。

 午前7時38分に稽古場に下り、入念に立ち合いのチェックを行った。宿舎へ引き揚げる際には「(鶴竜戦は)楽しまなければ損かな?」と話した。場所前には昨年春場所の入門以来、井筒部屋へ初の出稽古をし、鶴竜の胸を借りた。結果は66番取って3勝。対策は形にはなっていたものの、大関の壁は厚かった。

 それでも、後ろは見ない。2日目は初の横綱挑戦となる日馬富士戦。勝てば、元大関武双山(現藤島親方)を抜くデビューから7場所2日目での最速金星となる。

 「今まで上位の人には一方的にやられていたのに、今日攻められたのはプラス。無我夢中になってしまったことがいいのか悪いのかは、(フィギュアスケートの浅田)真央ちゃんじゃないけど、ハーフ&ハーフ」。最後はキュートに笑った超新星。上位陣と総当たりする春場所は、まだ始まったばかりだ。

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