遠藤に待望の初日「まさか勝てるとは」
「大相撲春場所5日目」(13日、ボディメーカーコロシアム)
悩めるホープ遠藤(23)=追手風部屋=に待望の初日が出た。大関稀勢の里と激突し、相撲センス抜群の突き落としで初白星を挙げた。入門7場所5日目で大関戦初勝利。今後の逆襲に期待が膨らんだ。横綱白鵬、日馬富士は危なげなく勝って5連勝。全勝は両横綱と平幕大砂嵐の3人になった。39歳のベテラン旭天鵬が通算勝ち星を873勝とし、大鵬を抜いて単独5位に上がった。
歴史が動いた瞬間だった。遠藤は土俵下に落ちた稀勢の里の背を見送ってから、思わずペロリと舌を出す。「信じられない。まさか勝てるとは思っていなかった」。すぐ下にいる勝負審判で師匠の追手風親方(元幕内大翔山)に目をやると、特別な感慨が体全体を包み込んだ。
今場所初めて、速く低く強く立った。的の大きな稀勢の里の胸板へもろ手突きを見舞い、左の喉輪で相手を起こす。ここでいったん引いたが、すぐに体勢を整え、突っ張りを連発。稀勢の里が逆襲に出ようと踏み込んだ瞬間、左へ回り込んで突き落とした。
鶴竜、日馬富士、白鵬、琴奨菊と、初日から続いた横綱大関戦は痛恨の4連敗。だが、23歳の若武者は貴重な敗戦を糧とし、わずかな時間の中でも成長し続けた。左四つの稀勢の里は相四つ。まわしを取れるチャンスはあったが「四つになれても自分の方が力不足」と判断し、あえて突っ張って出たのが奏功した。
この日、観客席では地元石川県穴水町の応援団30人が熱い声援を送った。午前7時にバスで地元を出発し、深夜に帰郷するという強行軍。その思いに白星で応え、「みなさんが来てくれた日に勝ってよかったです」。持って生まれた大一番の強さを発揮した。
出番前に「(立ち合いで)変わらずにいって、負けてこい」と真っ向勝負を指示した師匠も胸をなで下ろした。「今日負けたら5連敗。一番でも勝ててよかった。当たって突っ張っていったからね」と愛弟子の殊勲星を喜んだ。
ホープの真価が問われた序盤戦の横綱大関5番勝負。結果は1勝4敗だったが、収穫は大きい。「一番も勝てないと思っていたので、一番勝てただけでも上出来。上位の雰囲気、圧力を肌で感じられたのがよかった。この1勝を無駄にしないように頑張ります」。6日目の相手は番付が下の玉鷲。逆襲の中盤戦が始まる。