琴欧洲、涙の引退「相撲は自分の人生」
「大相撲春場所・12日目」(20日、ボディメーカーコロシアム)
日本相撲協会は20日、元大関で西関脇琴欧洲(31)=ブルガリア出身、佐渡ケ嶽部屋=の現役引退を発表した。昨年九州場所で痛めた左肩痛で今場所は10日目まで1勝9敗と不振を極め、11日目から休場していた。大阪市ボディメーカーコロシアムで行われた引退会見では涙を浮かべて思いを語った。大関鶴竜が横綱日馬富士を送り出しで破り、綱とりへ大きく前進した。ホープ遠藤は松鳳山を寄り切って星を6勝6敗の五分に戻し、史上最速の三役昇進へ夢が膨らんだ。稀勢の里を押し倒した横綱白鵬が唯一の無敗となった。
端正なマスクが涙でくしゃくしゃになった。白い羽織に藍色のはかまをはいた琴欧洲が男泣きした。現役最後の取組になった10日目の白鵬戦を振り返り「巡業で毎日のように稽古をした白鵬関と最後に相撲を取れて幸せでした」と話した後、流れる涙をハンカチで何度もぬぐった。
横綱昇進を期待されながら度重なるけがに泣いた。最終的には昨年九州場所で痛めた左肩の負傷が回復せず引退を決意。「今場所は思うように体が動かず連敗を続けた。横綱戦の後、師匠(元関脇琴ノ若)と話して決めた。横綱になれなかったのは心技体がそろわなかったんだと思います」と振り返った。
思い出の一番には05年名古屋場所の朝青龍戦を挙げた。「初めて横綱に勝った。横綱は神様だけど、人間だと思ってうれしかった」。約11年間の力士生活を振り返っては「いい思い出しかない。お相撲さんになって本当に良かった。相撲は自分の人生。今までも、これからも」と、しみじみと話した。
今後は「琴欧洲親方」として相撲協会に残り、後進の育成に力を注ぐ。「しっかり勉強していきたい。これまでお世話になった分、皆さんにお返ししたいと思っています」と、新たな決意を口にした。