横綱鶴竜誕生へ…26日にも正式決定
「大相撲春場所・千秋楽」(23日、ボディメーカーコロシアム)
大関鶴竜が大関琴奨菊を寄り切りで下し、14勝1敗で幕内初優勝を果たすとともに場所後の横綱昇進を確実にした。先場所は14勝1敗の優勝同点で今場所が綱とりだった鶴竜は、場所前に日本相撲協会の北の湖理事長(元横綱)が明示した「13勝以上の優勝」という昇進の目安を満たした。取組後には、審判部が同理事長に横綱昇進を諮る臨時理事会の招集を要請。24日の横綱審議委員会の推挙を経て、26日の夏場所番付編成会議と理事会で正式に第71代横綱鶴竜が誕生する。
支度部屋でモンゴルから駆け付けた父と母を見た時、鶴竜は初めて笑顔をはじけさせた。抱き合い、キスして大喜び。15日間、張り詰めてきた緊張から解放され1人の息子にやっと戻った瞬間だった。
勝てば初優勝、そして綱とりのかかる人生の大一番。初土俵から12年半、積み重ねてきたすべてを出した。
立ち合いで一瞬、引いたが自慢の身体能力で琴奨菊を押し返す。左下手をガッチリつかむと一気に寄り切った。会場は割れんばかりの大歓声に包まれた。
過去2度逃した優勝に「3度目の正直。やっとできた」としみじみ。念願の初賜杯を手にした表彰式では、目にこみ上げるものがあったが涙は出なかった。「変な感じ」と愛する両親に会うまでは、ずっと上の空だった。
大学教授一家で何不自由なく育った。だが大相撲中継を見て力士になると決め、15歳で単身来日。異国で土俵生活に打ち込んだ。
故郷への甘えは断った。場所中、両親と電話で話すのは初日と千秋楽のみ。大一番の前夜も連絡は取らなかった。「夢はモンゴル語と日本語の両方かな」と、幼少期を過ごした故郷を思う唯一の時は夢の中だった。
平凡な成績続きで目立たない大関だった。奮起したのは昨年。「このまま終わりたくない」と一段上を目指した。筋肉量を4キロ増やし昨夏から人生最重量の154キロ。前へ出る相撲も身につけた。2場所連続で両横綱を破り、14勝を挙げるほど急激に成長した。
昇進の目安「13勝以上の優勝」をクリア。昇進を審査する審判部は、北の湖理事長に臨時理事会の招集を要請。24日に横綱審議委員会(横審)に諮られ、26日に第71代横綱誕生の運びとなる。土俵入りの型は時津風一門の歴代横綱同様に「雲竜型」、しこ名は鶴竜のままとなるもようだ。
3横綱は2001年初場所の曙、武蔵丸、貴乃花以来。「横綱は勝って当たり前。皆さんの喜んでくれる相撲を取りたい」と鶴竜。“白・馬・鶴”の最強モンゴル3横綱時代が到来する。