鶴竜「一生懸命」シンプルな口上で決意
注目の口上は実にシンプルだった。日本相撲協会は26日、大阪市のボディメーカーコロシアムで大相撲夏場所(5月11日初日・両国国技館)の番付編成会議と臨時理事会を開き、東大関鶴竜(28)=モンゴル出身、井筒部屋=の第71代横綱昇進を満場一致で決めた。昇進伝達式は大阪市内の法岩寺で行われ、鶴竜は分かりやすい四字熟語として「一生懸命」を使った。
穏やかで誠実な鶴竜らしい口上だった。雨模様の中、午前9時23分に使者の八角理事(元横綱北勝海)と湊審判委員(元幕内湊富士)が到着。師匠の井筒親方(元関脇逆鉾)、おかみさんの福薗杏里さんに挟まれるように座った鶴竜は、朗報を聞くと静かに、しっかりと思いの丈を流ちょうな日本語に乗せた。
「謹んでお受けいたします。これからより一層稽古に精進し、横綱の名を汚さぬよう一生懸命努力します。本日はありがとうございました」
横綱審議委員会の推挙を受けた前日夕方、「口上はシンプルにいきたい」と話していた。漢字の四字熟語は、2年前の大関昇進時も使わなかったこともあり今回も見送られると思われていたが、小さな子供でも理解できる「一生懸命」を採用した。
「口上は昨夜、決めました。皆さんに分かりやすいように、自分の思ったことを伝えようと思った。これからは大関の時より責任がありますし、土俵外でも自分の品格を見られるので、全部含めて一生懸命相撲のことを考えていこうということ。ちゃんと言えたかなと思います」
時津風一門からは第47代柏戸以来53年ぶり。井筒親方は「入門時は小さかったが、よくここまできた。誠実な性格で、稽古はうそをつかなかったということでしょう」と感無量の面持ちで話した。
新横綱は27日の綱打ち式後に優勝22回の貴乃花親方に雲竜型土俵入りの指導を仰ぎ、28日には東京・明治神宮で奉納土俵入り。「力士に尊敬されるような力士にならないといけない。ありのままで頑張っていきたい」。気は優しくて力持ち‐本当にお相撲さんらしい横綱の誕生だった。