逸ノ城、最速大関撃破!あるぞ横綱戦
「大相撲秋場所・11日目」(24日、両国国技館)
新入幕の逸ノ城が大関稀勢の里をはたき込みで破り、10勝目を挙げた。幕下付け出しデビューから5場所目での大関戦初勝利と幕内2桁白星は年6場所制が定着した1958年以降最速の記録となった。新入幕力士が大関に勝ったのは00年5月の栃乃花(現二十山親方)以来14年ぶり。横綱白鵬は新関脇豪風をはたき込んで全勝を守り、単独首位をキープ。鶴竜も大関豪栄道を突き落として1敗を堅持した。
憎たらしいほどの落ち着きぶりだ。逸ノ城は稀勢の里に立ち合いで2回待ったをされて、即座に作戦変更を決めた。立ち渋る大関の焦燥感を見抜いて、3度目の立ち合いで相手の頭を押さえつけながら左に変化。足が出ない稀勢の里は両手からバッタリ土俵に落ちた。わずか1秒の勝負だったが、心理戦では完全に大関を圧倒。師匠の湊親方(元幕内湊富士)が「すでに勝負師の雰囲気を持っている」と評する、勘の良さと勝負度胸がもたらした白星だった。
00年5月場所12日目に千代大海を破った栃乃花以来となる新入幕力士の大関戦勝利で2桁の10勝に到達。「うれしいです」と笑顔を見せたが、すぐに「まだまだ(場所は)終わりじゃない」と気を引き締めた。立ち合いの変化については、「左に変わって決まらなければ、すぐに左まわしを取って攻めればいい」と説明。初めての大関戦で冷静に状況判断ができるメンタル面の強さは半端じゃない。
北の湖理事長(元横綱)も「1敗で優勝圏内だし、今場所を盛り上げている」と高く評価。取組を編成する審判部の伊勢ケ浜審判部長(元横綱旭富士)は「横綱との対戦?あした(25日)決めます。ただ、検討する状況にはある」と語った。25日午前に決まる13日目の取組で横綱戦が組まれる可能性も十分だ。
「横綱と当たる?いや、結構です」と謙遜したが、日に日に存在感を増してきており、完全に秋場所の主役といっていい。巨体とビッグハートを兼備する怪物の勢いは止まりそうにない。