稀勢 全勝鶴竜に突っ張りで土つけた
「大相撲九州場所・11日目」(19日、福岡国際センター)
大関稀勢の里が、全勝の横綱鶴竜を押し出し、土をつけた。稀勢の里は2敗を堅持。横綱白鵬は大関豪栄道をはたき込み、1敗でトップに並んだ。豪栄道は7敗目で、かど番まで後がなくなった。横綱日馬富士は関取碧山にはたき込まれ、3敗に後退。新関脇逸ノ城は豊響を突き落とし、6勝目を挙げた。
右の眉に血がこびりついていた。突っ張り合いの激しさを物語る“勲章”。稀勢の里は患部を少し気にするしぐさをしながら「立ち合いは悪くなかった。相手の動きはよく見えていた」と、小さな声で振り返った。
実際の立ち合いは鶴竜に踏み込まれ、後ずさりした。だが、ここから体が動く。作戦を、体を離して取る方へ変更し、強い突っ張りをタイミングよく繰り出した。足もついていき、左へ回りながら防戦一方の横綱を押し出した。
前日の日馬富士戦は何もできず押し出された。2敗へ後退し、初優勝を望むファンの期待を裏切った。「昨日情けない相撲を取ったので、今日は何とかしようという気持ちだった」。無念の思いをこの一番にぶつけた。
鶴竜を自分の手で1敗に引きずり下ろした。北の湖理事長(元横綱)は「稀勢の里は強引な相撲だったが、足の運びがよかった。この白星は気分的にも大きいだろう」と褒めた。
12日目は、史上最多タイ32回目の優勝を目指す1敗の白鵬と対戦する。「明日も今日のような自分の相撲を取りたい」。悲願の優勝へ、稀勢の里が持てる力のすべてを出し切る。