宇良、居反り封印で快勝デビュー

 「大相撲春場所・2日目」(9日、ボディメーカーコロシアム)

 関学大から初めて角界入りした宇良(22)=木瀬=が、新弟子検査合格者らの前相撲で初土俵を踏み、高田(藤島)を相手に得意の居反り(いぞり)は封印したものの、右からの突き落としで快勝した。4日目に勝って2連勝すれば一番出世となり、5日目の新序出世披露に臨み、夏場所(5月10日初日、両国国技館)で序ノ口の番付に載る。

 横綱白鵬は佐田の海を上手投げで退け、横綱日馬富士は栃煌山を押し出したが、大関稀勢の里は小結妙義龍に寄り切られ、3年ぶりに初日から2連敗を喫した。

 「宇良~」、「居反り~」。前相撲では異例の声援が飛んだ。報道陣は約50人が押し寄せた。注目の初土俵。宇良は立ち合い、正面から当たった。低く鋭い踏み込みで高田を押し上げると、最後は右から肩を抑え、突き落とした。わずか2秒。速攻でデビュー戦を飾った。

 「居反り、足取りと言われているけど、しばらくは封印している。出す時がきたら出すけど、今は狙っていない」。ファン期待の奇手はお預け。目標の「2年で関取」へ、まずは「基本に忠実な相撲」を芯に据えた。

 両手で相手の膝を押し上げ、後ろに反って倒す「居反り」を引っさげ角界入りした。平成以降、幕内では出ていない決まり手だ。昨年6月、バラエティー番組「マツコ&有吉の怒り新党」で取り上げられ大反響を呼んだ。周囲が過熱する中、木瀬親方(元幕内肥後ノ海)から「(取材に)囲まれても、自分のために戦うんだぞ!!」とゲキが飛んだ。その言葉を胸に、初土俵にも「気にしない。緊張はない」と冷静だった。

 家族、高校、大学のOBが見守った。京都府立鳥羽高時代の恩師で相撲部・田中英一監督は感無量の面持ちだった。教え子は高校入学時、152センチ、53キロしかなく、高2までは万年補欠。床山、呼び出しなどの裏方に就職を考える程、弱い力士だった。高3から遅い成長期が訪れ、成績も上がり、関学大に推薦入学した。

 思い立ったら一直線の男だ。68キロあった大学2年の夏、体重別選手権(65キロ以下)に出場するため減量した。兵庫県宝塚市の山を一心不乱に走り、道に迷い、遭難しかけたが、川の水を飲んで生還した。田中監督は思い出を振り返りながら、ここまでたどり着いた努力を称賛した。

 「プロになったと思えるのはここから。強くて心優しい力士になりたい」。初心を心に刻み、宇良が出世街道を歩み始めた。

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