逸ノ城お見事!白鵬に“恩返し”できた
「大相撲夏場所・初日」(10日、両国国技館)
三役に復帰した小結逸ノ城が、史上初の2度目の7連覇と、35回目の優勝を狙う横綱白鵬を右から突き落とし、5度目の対戦で初めて勝った。白鵬の初日黒星は12年夏場所に安美錦に敗れて以来3年ぶり。大関とりに挑む関脇照ノ富士は佐田の海に寄り切られて、左膝のけがで先場所を途中休場した遠藤は勢に突き落とされた。
体重207キロのどでかい男が、でっかい仕事をやってのけた。これまで4戦全敗だった白鵬に初めて勝った逸ノ城は「よかった。うれしい」と笑顔を見せた。
今までの経験を生かした。横綱が待ったをした後の2度目の立ち合い。右を差したものの、「中途半端に差していると、いつもみたいになる」と瞬時に抜き、相手の左腕を抱え込んだ。勢いで小手投げ気味に突き落とすと、横綱はたまらず手をついた。満員の国技館がどっと沸き、座布団が宙を舞った。
4月29日の横綱審議委員会の稽古総見では、ぶつかり稽古で土俵上に転がされ、泥まみれにされるなど、かわいがられた。師匠の湊親方(元幕内湊富士)は「恩を返すのがこの世界」と、まな弟子の雪辱にご満悦。自身は98年初場所10日目に横綱貴乃花を初めて破っているが「自分の時より弟子が勝った方がうれしい」と喜んだ。北の湖理事長(元横綱)も「逸ノ城はこれから勝ち込んで、2ケタは勝たないと」と、22歳のホープに期待を込めた。
母の日ということで、普段なかなか会えない故郷モンゴルの母ボロルトヤさんに、これ以上ないプレゼントになった。「向こうでもテレビで見てくれていると思う」と、支度部屋でも笑顔が絶えなかった。
7場所連続優勝を目指す白鵬に土をつけたが、満足感はない。快勝スタートの夏場所に、「前に出て勝ったわけじゃない。自分の相撲ではないので、これからも気合を入れていきたい。始まったばかりなので一番一番集中する」と、気合を入れ直した。