力士・旭天鵬に別れ「人生のすべて」
大相撲のモンゴル出身力士として長く土俵を務めた元関脇の幕内・旭天鵬(40)=本名太田勝、友綱=が27日、現役を引退した。名古屋市内の宿舎で、師匠の友綱親方(元関脇魁輝)とともに引退会見に臨み「相撲は私の人生のすべて。今後は拍手をもらえる力士を育てたい」と語った。日本相撲協会は同日、年寄大島の襲名を承認。モンゴル出身で初めての親方となった。
涙あり、笑顔あり。山あり、谷ありだった相撲人生を象徴するように、旭天鵬は引退会見でもさまざまな表情で現役生活を振り返った。家族の話になると、こらえきれず目頭を押さえた。そして、親方としての意気込みを聞かれると「これからも稽古まわしはつけるよ。やっぱり相撲が好きだからね。さっきも付け人に『オレのまわし、ちゃんとしとけよ』と言ったんだ」と笑った。
相撲界の主流となったモンゴル勢のパイオニアとして92年に入門。旭鷲山とともに幕内で活躍し、朝青龍、白鵬らが躍進する土台を築いた。熱望した幕内在位100場所には届かなかったものの、数々の記録を残して「角界のレジェンド」と呼ばれるようになった。
しかし、あと2カ月で41歳。衰える体力を気力でカバーしていたが「負けが続いて、自分の力がなくなったと感じた。気持ちが切れた、と師匠に伝えた」とピリオドを打った。
思い出の1番には、幕内優勝を決めた12年夏場所での栃煌山との優勝決定戦を挙げた。37歳8カ月は史上最年長の初Vだった。「あれでいろんな人に知ってもらえたし、自分を成長させてくれた」と感謝した。
これからは大島親方として後進の指導にあたる。「たくさんの拍手をもらえる力士を育てたい」と抱負を述べた。会見を終えて花束を贈られると、いつものにこやかな表情に戻っていた。「これからネクタイの締め方を覚えないとね」と、笑顔で“力士・旭天鵬”に別れを告げた。