鶴竜変化2回「勝ちたい気持ち出た」
「大相撲秋場所・14日目」(26日、両国国技館)
横綱鶴竜は大関稀勢の里を相手に立ち合い、2度にわたって変化し、最後はもろ差しから寄り倒して2敗をキープ。稀勢の里は4敗目を喫してV戦線から脱落した。前日に右膝を痛めた大関照ノ富士は強行出場したが、大関豪栄道に敗れて3敗に後退。鶴竜が単独トップに立ち、千秋楽結びの照ノ富士戦で横綱初Vを目指す。
横綱初優勝への思いが強かったといえばそれまでだが、さすがに観客からはブーイングとやじの嵐。大一番で鶴竜が右へ変化。これは立ち合い不十分で待ったとなり、仕切り直し。すると今度は左へ変化。千秋楽を除くと過去最多となる58本の懸賞がかかった結びの一番は、横綱が見せた2度の変化で後味の悪さだけが残った。
「チャンスを逃したくなかった。やっぱり勝たないと。勝負に勝とうという気持ちだった」
立ち合いは2種類考えていたという。変化と張り差し。変化を選んだのは「勝ちたい気持ちが出ちゃった」と言い、「1回失敗したんで、もう1回気にせずいこうと思った」。ブーイングは耳に入っていたが、「それでも勝負にいきました」と勝ちに徹した。
審判長を務めた藤島親方(元大関武双山)は現役時代、一度も変化したことがない。「私は変化は汚い手段だと思っていた。終わった後に胸を張れる相撲を取りたかった。自分の相撲道とは違う。そこまでして勝ちたくなかった」。勝ちを優先した横綱にきつく苦言を呈した。
横綱昇進時には「お客さんが喜ぶ相撲を取りたい」と話していた鶴竜。過去13勝28敗だった稀勢の里を退け2敗を守り単独トップに立った。千秋楽で照ノ富士を下せば横綱初優勝が決まる。最後は拍手をもらえる相撲を見たいものだ。